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高まる北朝鮮の急変事態リスク、対応シナリオを整備しなければ

高まる北朝鮮の急変事態リスク、対応シナリオを整備しなければ

Posted September. 02, 2023 08:33,   

Updated September. 02, 2023 08:33

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北朝鮮内の食糧問題は昨日今日のことではない。ただ、最近の食糧事情は確かに深刻だ。通常、ある地域内の食糧需給状況を把握する時は、欠食の概念で確認する。だが、北朝鮮は少し違う。慢性的な食糧不足国家である北朝鮮で、欠食は一種の定数であり、餓死、つまり餓えて死んだ人がどれだけ多いかが食糧難を測る基準になる。

国家情報院によると、北朝鮮内の餓死者発生件数は今年1~7月基準で約240件。最近5年間、毎年同期間平均(約110件)の2.2倍増加した。北朝鮮は最近、配給順位表の最上位にいる軍人に支給する1人当たりの1日の穀物配給量まで、従来の620グラムから580グラムに減らしたという。5月に漁船に乗って2つの家族が命を賭けて脱北した背景にも、「飢え」がある可能性が提起された。

生死の問題と直結する食糧難は、北朝鮮内のすべての領域に影響を及ぼすが、特に韓国政府当局は犯罪率との関連性に注目している。政府当局者は、「人は極端な状況に追い込まれれば、極端な犯罪に及ぶのではないか」とし、「餓死ほど極端な状況はない」と話した。

このような雰囲気を反映するように、北朝鮮内の強力犯罪は急増傾向にある。国家情報院は、今年上半期の北朝鮮内の強力犯罪が前年同期比3倍に増加したと明らかにした。物資奪取を狙って手製爆弾を投げつけるなど、大型化・組織化した犯罪まで発生している。爆発物テロの情況も最近確認された。北朝鮮情勢に詳しい情報筋によると、現地の数人の住民の証言を通じて、テロの情況が把握された。この住民らは人々の悲鳴まで聞いたという。偶発的または誤って発生した事故の可能性もあるが、軍部幹部など支配層を狙った爆弾テロの可能性もあるという。

強力犯罪が急増し、テロの可能性まで浮上している現状を休戦ラインの向こう側の話だけと見ることはできない。北朝鮮内の急変事態の可能性とも直結するからだ。情報筋は、「閉鎖的な体制であればあるほど、段階的な崩壊よりも急変事態で一気に崩壊する可能性が高くなる」と話した。高位層を狙ったテロなどは、この急変事態を引き起こす可能性の高いトリガーとも言われる。人民軍副小隊長出身の脱北者の安燦一(アン・チャンイル)世界北朝鮮研究センター理事長は最近、あるセミナーで、「北朝鮮の急変事態は予告されている。2、3年以内に訪れるかもしれない」と話した。

北朝鮮の急変事態に対応する計画を政府はすでに持っている。シミュレーションを行い、毎年この計画を更新している。ただし、金正恩(キム・ジョンウン)政権初期より政府内外で北朝鮮の急変事態に対する議論や悩みが減少したという話も聞かれる。10年以上経過した金正恩体制がある程度安定期に入ったため、急変事態の可能性が減ったという判断からだろう。

新型コロナウイルス感染拡大による国境封鎖が食糧難を悪化させ、その食糧難が反体制テロ可能性まで連鎖的に高めている現状は、新たな展開と見なければならない。急変事態の危険水位が高くなったのは明らかだ。北朝鮮の急変事態の際、韓国の軍民作戦計画を練り直す必要がある。大量脱北事態、周辺国の介入シナリオなどに伴う対応策まで、すぐに取り出せるレベルに整備する時だ。