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人の命を救った黒山島の鯨物語

Posted October. 06, 2023 08:48,   

Updated October. 06, 2023 08:48

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人間は動物だ。動いてこそ生きる存在、そのためだろうか。しばらく静かだったウォーキングブームが、再び起きている。ウォーキングといえば、済州(チェジュ)オルレや登山を先に思い浮かべるが、島にも歩きやすい道が多い。社団法人・島研究所では、全国の島ごとに散在している道のうち、代表的な島道100ヵ所を一つにつなげた「百島百道」サイト(100seom.com)を構築し、情報を無料で提供している。政府省庁と自治体が、国民の税金で作った道を放置しているのが残念だったからだ。島では、ずっと海を見ながら歩くこともでき、島の郷土料理を味わうこともできる。

黒山島(フクサンド)には、百島百道の中で38番目のコースである「七落山(チルラクサン)道」がある。紅島(ホンド)観光の途中にしばらく立ち寄る人には、絶対に分からない道だ。ソサ里から上羅山(サンラサン)城まで続く7.1キロの七落山道は、険しくなく平坦な稜線だ。この道では、島暮らしの宝物のような話も聞くことができる。

黒山島と言えば、人々はガンギエイを先に思い浮かべるが、かつて黒山島はクジラの島でもあった。日露戦争後、日本帝国は韓半島海域の捕鯨独占権を掌握後、韓国の海で約40年間1万頭以上の大型鯨を捕まえたが、黒山海で捕獲した大型鯨は1446頭にも上った。そのため、黒山島には鯨を解体していた鯨板場という地名があり、鯨公園もある。霊物だと思って鯨を捕まえなかった黒山島に、鯨肉文化が生まれたのもその頃からだった。

しかし、黒山島に鯨肉があふれても、決して鯨肉を食べなかった家がある。まさにここに住む咸陽朴(ハムヤン・パク)氏たちだ。かつて、家の人たちが海で危険に陥った時、クジラが命を救ってくれたためだという。

ある年の冬、朴氏一家の数人が、黒山島西南側の海で操業中に突風に遭い、危機に直面した。みんな船の前でうつぶせになって自暴自棄になっていた。ところが突然、クジラ1頭が近づいてくるかと思ったら、漁船の下に消え、揺れていた船が静かになった。あの世かと思って顔を上げてみると、驚くべきことが起きていた。船底に入っていたクジラが、背中で漁船を支えて黒山島の方へ泳ぎ始めた。クジラは、サリ村が見える地点に船を下ろして、旋回して帰っていった。波が依然として激しく、漁船がひっくり返りそうになると、クジラが戻ってきて、再び背中に船を乗せて泳いで海辺の近くに降ろした後、消えてしまった。

一見信じがたい話だ。しかし、筆者が黒山島で会った朴氏一家の人と村の人たちは、このような鯨の恩徳を口をそろえて話した。島には、このような神秘的な物語が少なくない。島がストーリーを持つようになり、またその魅力に惹かれて人々はもっと島を訪れる。

文化体育観光部は最近、黒山島を「K観光島」の一つに選定し、玆山魚譜とクジラなどをコンテンツに島観光を活性化する計画だという。クジラと人々が共存していたこのような美しい物語資源を活用して、黒山島をクジラ生態の島にしてみてはどうだろうか。今秋、このような美しい物語と風景に出会える島へのウォーキングツアーをお勧めする。