救急車を「タクシー」として利用した芸能人たち、重体の命を救う道をふさぐ犯罪だ

渋滞している道路の真ん中で、サイレンが鳴り響く。救急車には命の危険な患者が一刻を争って病院に向かっている。ドライバーは患者を搬送する救急車のために道を開き、道路上の「モーゼの奇跡」を演出する。誰かのために譲歩した１秒が、命を救う１秒になるだろうという期待を持ってのことだ。

これを悪用して摘発された芸能人たちが、最近、批判の対象になっている。男性グループ「ｇｏｄ」出身の歌手キム・テウは、２０１８年３月、京畿道高陽市一山西区（キョンギド・コヤンシ・イルサン・ソグ）から私設救急車に乗って、ソウル城東区（ソンドング）のイベント会場まで移動したことが遅れて知らされ、批判を浴びている。キム・テウは、救急医療に関する法律違反の罪で略式起訴され、罰金５００万ウォンが確定した。キム・テウは、「弁解の余地もなく私の過ちであることを認め、深く反省している」と正式に謝罪した。当時、キム・テウの所属事務所側が私設救急車の運転手に支払った金額は３０万ウォンだった。

以前も、私設救急車を利用して摘発された芸能人は多かった。２０２１年１０月、有名フォークグループの歌手は、忠清北道清州（チュンチョンブクド・チョンジュ）から京畿道南楊州（キョンギド・ナムヤンジュシ）の公演場まで救急車で移動し、噂になった。２０１３年にはコメディアンのカン・ユミがソーシャルメディア（ＳＮＳ）に救急車内部の映した証拠写真と共に、「釜山（プサン）公演に遅れて、救急車というものを初めて乗って移動中…。生きているうちにいろいろなことが…」と投稿して批判を受けた。２０１８年、蔚山（ウルサン）の私設救急車業者が某芸能人を空港やイベント会場に運んで、処罰を受けたりもした。

救急車は、なぜ芸能人の「弾丸タクシー」になったのだろうか。イベント１件当たりに少なくとも数百万ウォン、多くは数千万ウォンを受け取る有名芸能人にとって、時間はまさにお金だ。彼らが救急車を悪用して交通渋滞を打開しようとする理由だ。

３年前、放送人のキム・グラのユーチューブチャンネルに出演した公演企画エージェンシーの関係者が明らかにした芸能人の１件当たりの行事費は、トロット歌手のソン・ガインが３５００万ウォン、イム・ヨンウンやヨンタク、キム・ホジュン、チャン・ミンホが２０００万ウォン、ガールズグループのＭＡＭＡＭＯＯは５０００万ウォン台だった。彼らほどの人気がある芸能人なら、当時似たような価格帯の行事費が策定されただろうし、３年が過ぎた今はさらに上がった可能性が高い。

そのため、一部の所属事務所は収益のために移動距離と時間をきちんと考慮せず、無理にスケジュールを決めるのが常だ。「捕まらなければ」という安易さに救急車に搭乗した芸能人と、収益に目がくらんで不法営業を行った私設救急車業者によって、私設救急車利用をめぐる議論は、忘れそうになれば登場する芸能界の常連ニュースになってしまった。

有名人に関するニュースは、いつものように波及力が大きい。関連記事に、「今後は、私設救急車のサイレンの音を聞けば、『芸能人が不法利用するのではないか』と疑いたくなりそうだ」、「（道を）譲歩した人をバカにした」というコメントが頻繁に見られる。

救急車に乗った芸能人たちは、自分が犯した過ちが罰金５００万ウォンの重さの違法行為以上だという事実を知っているだろうか。彼らは、人の命にかかわる社会的合意に亀裂を生じさせた。彼らに支給する高価の行事費を策定する基準は、「大衆の人気」だ。自分たちの身代金を引き上げた大衆の命を人質に、これ以上欺瞞行為をしてはならない。