曺喜大(チョ・ヒデ)新大法院長(最高裁判所長官)が最初の司法行政改革として「裁判所長候補推薦制」を選んだのは、司法部内の人事不信と不必要な混乱を防ぐことが最優先課題だと考えたからだ。司法部の内外で指摘される裁判遅延問題を解決するための第一歩として人事改革カードを取り出したのだ。
●「人気投票」への変質を防ぐための正常化措置
これまで裁判所長や裁判所長候補として有力な首席部長判事などが、投票権を行使する所属裁判所の同僚や後輩判事らの顔色をうかがい、迅速な裁判進行のために苦言を呈することができないというのが、裁判所長候補推薦制の最大の弊害だと指摘されてきた。このため、裁判所の内外からは「裁判官の人事が人気投票に変質するのではないか」という懸念も絶えなかった。このような副作用を防ぐために「投票制」を廃止する案が検討されたという。
また、第一線の裁判所ごとに推薦委員会を立ち上げ、投票を行わず全国単位で裁判所長の資格が十分な候補の推薦を受ける方式を取ることで、所属裁判所長を選んでおいて人事異動で当該裁判所を去る問題を解消する方法も検討している。
裁判遅延問題を解決するため、裁判所長を裁判に投入する案も設けた。これに先立ち、曺氏は、国会人事聴聞会で、「就任すれば、長期未済事件を集中管理する」とし、「裁判所長に最優先に長期未済事件の裁判を任せる」と明らかにした。裁判所長に長期未済事件を任せ、直接責任を負う仕組みを作るなど、迅速な裁判のための制度変化を予告したのだ。これに対する裁判所内部の反応は肯定的だ。ある在京地裁部長判事は、「裁判所長が直接、長期未済事件を担当して管理すれば、所属裁判官の勤務評定にも影響が出るだろう」とし、「この場合、未済事件が多い裁判所には未済を減らすかなりの動機づけになる」と評価した。
●「迅速な裁判を受ける権利を守れず、国民の苦痛を増大」
曺氏は同日、就任の言葉でも、「裁判遅延」問題の解決を強調した。曺氏は、「すべての国民は迅速な裁判を受ける権利があるにもかかわらず、裁判所がこれを守れず、国民の苦痛を増大させている」と述べた。その上で、「国民が今、裁判所に切実に望んでいる声を考えると、裁判遅延問題を解消し、紛争が迅速に解決できるようにすることが急務だ」とし、「細心の注意を払い、多角的な分析を通じて、絡み合った裁判遅延問題の糸を解くために努力する」と述べた。
曺氏は、刑事司法システムの一大変化の可能性も示唆した。近く条件付き拘束令状制度と家宅捜索令状事前審問制度の導入議論を公論化する方針だ。条件付き拘束令状制度は、被疑者に令状を発行するが、居住地制限などの条件を付けて釈放し、条件を破った場合のみ身柄を拘束するという制度。家宅捜索令状事前審問は、検察が家宅捜索令状を請求すると、判事が被疑者など事件関係者を審問した後、令状発行の可否を決定するというもの。ただし、両制度とも検察など捜査機関が「捜査に支障が避けられない」と強く反発しているため、現実のものになるかどうかは未知数だ。
曺氏は同日午前、大法院裁判研究官及び裁判所行政処の関係者と挨拶を交わした後、大法官(最高裁判所裁判官)らと昼食を共にした。15日には全国裁判所長会議を行う予定だ。裁判遅延問題、裁判所の安全強化などが公式議題に上がっている。その後、裁判所長候補の推薦、裁判所行政処判事の補充など主要な懸案事項も議論されるとみられる。