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他人の不幸

Posted December. 28, 2023 08:26,   

Updated December. 28, 2023 08:29

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「私の不幸に対する唯一の慰めは他人の不幸だけ」

梁貴子(ヤン・グィジャ)の小説「矛盾」の一節だ。残酷な言葉のようだが、ほとんどの人は自分より不幸な人を見て慰められる。19世紀のデンマークの画家フラントヘニングセンは不幸な状況にある人々を描写した絵で有名だ。

ヘニングセンは肖像画、風景画、ジャンル画、さらには動物画にも長けていたが、彼に名声を与えたのはこの「葬儀」(1883年∙写真)という絵である。雪が降る寒い冬の日、黒い服を着た家族が墓地に向かっている。2人の幼い兄妹が手をつないで先頭に立ち、母親と思われる若い女性が老人に支えられながら後を追う。女の顔は青白いほど白く、妊娠している。葬儀の主人公はこの子供たちの父親であり、女の夫だ。友人や親戚もいないのか、葬儀の参列者は彼らだけ。女は夫を失った悲しみも大きいだろうが、お腹の中の末っ子を含む3人の幼い兄弟を1人で育てなければならない状況がより絶望的だったろう。頼れるのは年老いた父親だけだが、その老人も哀れな表情で頼れそうにない。

絵の背景になったのはコペンハーゲンに実際にある共同墓地だ。画家は庶民家族の不幸を劇的に見せるために苦心したようだ。憂鬱な冬の天気、がらんとした壁、家族だけの葬儀、青ざめた女の顔まで、悲劇と絶望感を増幅させる装置だ。

注目すべき点は右中景の2人の男だ。距離を置いてこの家族を見守っている。ヘニングセンは絵の鑑賞者たちもこの見物人と同じ視点でこの家族を見つめるようにする。この絵が公開されると、人々は感動して賛辞を送り、デンマーク国立美術館は直ちに所蔵品として買い入れた。

ほとんどの不幸は比較から生まれる。偉く見える人との比較は、より大きな不幸を生む。人々がこの絵に賛辞を送ったのは、この哀れな家族の不幸から大いに慰められたからだろう。もしかしたら、画家は周りの不幸を察して幸せを悟れという意味でこの絵を描いたのかもしれない。