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史上最悪の賃金未払い、奈落に落ちる人々

史上最悪の賃金未払い、奈落に落ちる人々

Posted January. 15, 2024 08:03,   

Updated January. 15, 2024 08:03

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昨年9月25日、雇用労働部(雇用部)の李正植(イ・ジョンシク)長官と当時法務部の韓東勳(ハン・ドンフン)長官は、政府ソウル庁舎の記者室で口をそろえて話した。「賃金未払いの根絶こそ、労使法治の確立の柱だ」。あれから4ヵ月が過ぎた。状況は少し良くなったのだろうか。

雇用部などによると、韓国の昨年の賃金未払い額は、過去最高値を記録する見通しだ。現場の声を聞いてみても、小規模の金型・部品工場が密集した京畿富川市(キョンギ・プチョンシ)では、昨年から賃金未払いの被害を訴える労働者が増えているという。特に労働基準法が適用されない5人未満の小規模事業所で、50代や60代女性が2~6ヵ月分の賃金を受け取れない事例が多い。地元労働カウンセラーは、「一日に10件程度、相談が入ってくる」と話した。

被害者の大半が低所得労働者である賃金未払いは、日常生活の土台を一気に崩す。ある日突然月給が入ってこないということは、生活費を借りなければならず、融資を返済できず、子供たちの塾を減らさなければならないという意味だ。文字通り、労働者と家族が一緒に奈落に落ちる。

米国は、賃金未払いを「賃金窃盗(Wage theft)」と表現する。米ミネソタ州は、常習的な賃金未払いの場合、最大懲役20年に処することができるようにするなど、法的処罰も強い方だ。

米労働部の統計によると、昨年の米賃金未払い額の規模は1億5615万ドル(約2059億ウォン)、被害者は13万5067人だった。ところが昨年、韓国の賃金未払い額は1兆7000億ウォン以上で、被害者は30万人を超える見通しだ。経済規模(GDP・国内総生産)は米国の15分の1だが、未払い額は8倍程度もある。

現場の話を聞いてみると、理由が分かる。賃金未払いは、司法警察の権限を持つ労働監督官が捜査する。ところが犯罪と見るよりは、個人の債務関係で処理することが多い。とある労働カウンセラーは、「事業主が逃げて行方が分からないと事件を終結したり、未払い賃金が支給されなかったのに、『処罰不願書を書いて社長と合意せよ』と促すことが多い」と話した。賃金未払いは反意思不罰罪だ。被害者が加害者の処罰を望まなければ、処罰できない。市民団体「参与連帯」は、2021年の報告書で、「2007年に反意思不罰条項の導入以来、未払いが増加した」とし、「労働監督官の過度な合意勧誘を減らす対策が必要だ」と指摘した。

労働基準法によると、賃金未払いは最大3年以下の懲役、または3000万ウォン以下の罰金に処される。しかし、現実的に裁判まで行くケースは珍しく、裁判に行っても実際の処罰は平均200万ウォン程度の罰金で終わる。受け取れなかった賃金は、民事訴訟を起こして受け取らなければならないが、直ちに明日の生計が苦しい低賃金労働者たちが長期間の訴訟戦にしがみつくことは容易ではない。監督官は捜査意志がなく、罰金は未払い賃金よりはるかに少ないため、加害者は逃げたり持ちこたえたりするのが利益である構造となっている。

4ヵ月前の発言が気になったのか、雇用部は最近、「長官が賃金未払いの根絶に乗り出した」という資料を頻繁に出している。昨年1月も、雇用部は、「旧正月に備えて集中的に指導期間を運営することで、未払い賃金が速かに解決された」と自画自賛した。今年も集中指導期間が終われば、同様の資料が出る可能性が高い。その間、現場では賃金未払いで奈落に陥る労働者が増えている。