「究極的に私たち全員が望むのは、ありのままの姿で理解され、愛されることではないかと思います。私も(演技を通じて)自分自身をもっと受け入れるようになり、自分にもっと優しい人になる方法を学んでいます」
ネットフリックスのドラマ「BEEF/ビーフ~逆上~」で米放送界の最高権威賞であるプライムタイム・エミー賞の主演男優賞を受賞した俳優のスティーブン・ヨン氏(40)が作品と自身の演技人生を振り返って話した。
イ・ソンジン監督(43)とヨン氏をはじめ、韓国系制作陣が多数参加した「BEEF」は、先月15日(現地時間)に開かれた第75回プライムタイム・エミー賞授賞式で、ミニシリーズ・テレビ映画部門の作品賞、脚本賞、主演男優賞など8つのトロフィーを手にした。現代人の孤独と怒り、不安を鋭く捉えたと評価を受けている。作品のあちこちに韓国人教会、韓国料理と文化が溶け込んでおり、「BEEF」の成功はさらに意味がある。
2日、エミー賞受賞後、初めて韓国メディアと映像で会ったヨン氏は、「『BEEF』の物語の一部になれたことに感謝している」と淡々と語った。ヨン氏は劇中で演じたダニーについて、「私たち全員が持っている様々な姿の羞恥心を集約した人物」と説明した。「無力で統制力を失った人物であり、私自身もそのような感情にとても共感する」とし、「キャラクターに溶け込んですべてを捨てなければならない役柄なので、恐怖があった」と打ち明けた。
「BEEF」でダニーは、仕事がない韓国人移民2世の都給業者。生活はいつも苦しく、親と弟を養わなければならないという心の重荷を背負って生きている。ヨン氏は、ダニーの怒りと絶望、孤独を説得力を持って演じ、エミー賞だけでなくゴールデングローブ賞の主演男優賞も受賞した。24日に予定されているSAGアワード(全米映画俳優組合賞)の主演男優賞にもノミネートされている。ヨン氏は、「(ダニーが経験した)移民の現実は、私が直接経験してよく知っていること」とし、「制作陣が直接経験したことを盛り込むことに多くの努力を傾けた。作品を通じて、特に韓国の視聴者の皆さんと深く連帯し、共感することができて光栄だった」と語った。
2022年のカンヌ映画祭で「ブローカー」で韓国俳優初の主演男優賞を受賞した俳優ソン・ガンホ氏に匹敵する成果を収めたという称賛については、「ソン・ガンホ先輩は私とイ監督にとって英雄のような方」とし、「話にならない比較だ。比較自体に反論したい」と笑った。
「BEEF」を演出したイ監督は、作品の成功について、「多くの人が劇中のキャラクターの中に自分の姿を発見したからではないかと思う」と話した。そして、「私たちの心の中に隠れている暗い部分を照らし出したかった。自分の内面の闇を他人を通じて発見した時に初めて互いを理解できる作品を作りたかった」と話した。
崔智善 aurinko@donga.com