原子力発電所を稼働する際に出る使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)の貯蔵施設を建設するための特別法案が数年前から国会常任委員会の敷居を越えられずにいる。現在ある貯蔵施設が2030年から飽和状態になると予想され、追加施設が建てられなければ原発停止の事態になりかねないと懸念されている。政府と与党は今月の臨時国会で特別法を通過させ、貯蔵施設建設の根拠を作る考えだ。
●2030年から貯蔵施設が飽和
韓国水力原子力(韓水原)の黄柱鎬(ファン・ジュホ)社長は20日、記者団に対し「原発稼働で発生する使用済み核燃料は、今後の追加原発建設などを考慮すると、80年頃まで計4万4692トン発生すると予想される」とし、「貯蔵施設を適切に確保できなければ、管理費用が増え、安定的な電力生産が難しくなり、電気料金の引き上げにつながる可能性がある」との認識を示した。
原発の核燃料は、寿命を終えた後も数十年間熱と放射線を放出するため、安全に保管する空間が必要だ。そのために必要な施設が使用済み核燃料貯蔵施設だ。現在、貯蔵施設が不足しているため、各原発の敷地内に一時的に貯蔵されている。
問題は、原発敷地内の貯蔵施設の飽和時期が迫っていることだ。2030年からハンビッ、ハンウル、古里(コリ)原発の順に貯蔵プールが飽和状態になる。韓水原は原発敷地の野外に核燃料貯蔵施設を建てて運営する案を推進している。そのためには特別法の制定が必要だ。
使用済み核燃料貯蔵施設の設立根拠を盛り込んだ「高レベル放射性廃棄物管理特別法」は、21年9月に最大野党「共に民主党」の金星煥(キム・ソンファン)議員案、22年8月に与党「国民の力」の金英植(キム・ヨンシク)議員案などが発議されたが、まだ所管の常任委員会の敷居を越えていない。政府・与党と野党の間で貯蔵施設の容量や設立時期などをめぐって意見の相違があるためだ。
●貯蔵施設容量、設立時期などが争点
最大の争点は貯蔵施設の容量だ。金星煥議員が発議した法案は、原発ごとに既存の設計寿命期間(各40~60年)に蓄積された廃棄物だけを保管できるように容量を制限する内容が盛り込まれている。設計寿命を終えた原発に対して運転期間を延長できないようにするというのが趣旨だ。一方、金英植議員の発議案は、老朽化した原発の運転期間の延長を考慮し、設計寿命が過ぎた後に発生した廃棄物まで保管できるように保管容量を拡大する内容を盛り込んでいる。
貯蔵施設の具体的な設立時期を法案に含めるかどうかも争点だ。政府と与党は、35年までに原発外部貯蔵施設の敷地を確保し、50年から処分施設を運営できるようにする案を推進している。特別法案に設立時期を明記し、敷地の選定と設立を迅速に推進するという方針だ。一方、野党は目標時期を法案に明記する必要はないという立場だ。
原発業界などでは、貯蔵施設を設けないままでは、一部の原発の運転を停止しなければならなくなると懸念している。黄氏は、「使用済み核燃料が原発敷地内に一定容量以上になると、原子力安全法により発電所の運転を停止しなければならない」とし、「実際に台湾では貯蔵施設を確保できず、発電所を停止したことがある」と説明した。
海外の原発運営国は早くから合意を経て、使用済み核燃料の処理に取り組んでいる。フィンランドは01年にすでに処分施設の敷地を選定し、16年に建設に着手した。同施設は25年から本格的な運営を開始する予定だ。スウェーデンは35年、フランスは40年にそれぞれ処分施設の運営が予定されている。このほか、中国とロシアは施設の敷地を確保し、日本とドイツは敷地選定手続きに入った。韓水原関係者は、「原発発電量上位10ヵ国のうち、敷地選定に着手していない国は韓国とインドだけだ」と説明した。
世宗市=チョ・ウンヒョン記者 yesbro@donga.com