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9・19全面効力停止、緩衝区域が消えた韓半島

9・19全面効力停止、緩衝区域が消えた韓半島

Posted June. 05, 2024 08:26,   

Updated June. 05, 2024 08:26

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韓国政府が、北朝鮮がごみや汚物をぶら下げた風船を韓国側へ飛ばし、全地球測位システム(GPS)への電波妨害を行ったことに対抗して、北朝鮮と2018年に結んだ「9・19南北軍事合意」の効力停止を決定した。政府は4日、閣議を開き、南北の相互信頼が定着するまで9・19合意の効力の全面停止を決定し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の裁可まで終えた。今回の措置により、軍事境界線(MDL)付近と北西島嶼での砲撃と軍事訓練が可能になり、強力な心理戦のツールとされる拡声器放送も可能になったと、政府と軍は明らかにした。

政府の9・19合意の効力全面停止は、すでに北朝鮮の一方的な全面破棄宣言によって有名無実となった合意に事実上の終止符を打つことを意味する。ただ、政府は今回、9・19合意の完全破棄ではなく、効力停止を選択した。今後、北朝鮮との政治的対話の余地を残しつつ、軍事的な行動の幅は広げようという措置だろう。にもかかわらず、北朝鮮の低級な挑発が続き、韓国が衝突も辞さないという断固たる態度で臨む限り、「強対強」の対決局面は続くものと予想される。

18年に締結された9・19合意は、北朝鮮の度重なる違反にもかかわらず、南北間の軍事的衝突を防ぐ最小限の安全板として機能してきたのも事実だ。昨年11月、韓国政府は北朝鮮の偵察衛星打ち上げを受けて一部効力を停止し、その後、北朝鮮が全面破棄を宣言したにもかかわらず、飛行禁止区域の設定を除く残りの条項に対する効力を維持し、陸海の緩衝区域の軍事行動を自制してきた。しかし、今回の措置で残っていた軍事的自制のラインまで完全に取り払ってしまったのだ。

政府は今後、北朝鮮の挑発の様相とレベルに応じて、段階的に対応強度を高めていく方針だ。北朝鮮も「汚物風船」を飛ばすことを一時停止するとし、韓国側の「反共和国ビラ散布」の中止を条件とした。北朝鮮へのビラ散布を続けるという韓国の脱北者団体をめぐって韓国国内の対立を誘発しようとする典型的な狙いだろう。にもかかわらず、北朝鮮へのビラ散布が南北間の緊張を再び高める引き金になりかねないという点で、今後の韓国政府の対応が注目される。

政府は、憲法裁判所が昨年、対北朝鮮ビラ禁止法に違憲決定を下したため、北朝鮮へのビラ散布に対する自制を要請しないという立場を維持している。しかし、憲法裁の決定は、表現の自由を過度に制限する過剰禁止違反と判断したものであって、国境地域住民の安全のための警告や制止まで禁じるものではない。「表現の自由」も「国民の安全」も守るのが国家の責務だ。北朝鮮に対する断固たる決意と同様に、危機を賢く管理する能力も必要な時だ。