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事件と事故

Posted June. 05, 2024 08:26,   

Updated June. 05, 2024 08:26

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「これは事故ですよね?」(イ・ヨソプ「設計者」)

脚本家のキム・ウニ氏が書いたドラマ「智異(チリ)山」は山を背景に起きる事故が、実は誰かが犯した殺人事件だったというストーリーを描いた作品だ。キム氏が事故だと思っていたら事件だったというストーリーをあえて書いたのは、それが与える響きがあるためだ。遠くは三豊(サンプン)百貨店の崩壊から近くは梨泰院(イテウォン)惨事に至るまで、数多くの大惨事が単なる事故ではなく、誰かの不注意が招いた事件だったという社会的共感がその響きの正体だ。イ・ヨソプ監督の「設計者」も、やはりこの事故と事件という異なる観点が作り出す様々な陰謀と陰謀論を映画の素材にしている。

ヨンイル(カン・ドンウォン)は事故に偽装して殺人を代行する殺人請負人の仕事をする。そんなある日、チュ・ヨンソン(チョン・ウンチェ)から検察総長候補の父チュ・ソンジク(キム・ホンパ)を殺してほしいと依頼されるが、それを遂行する過程で仲間たちを失い、ヨンイルの疑いはますます深まる。自分たちの背後にこの全てを設計したまた別の人物がいると確信し、ついに仲間まで疑うようになる。疑わしい人物を1人ずつ追跡していき、彼らが設計者であると確信して報復を企てる。結局「設計者」は設計していた人物が設計される側となり、誰も信じられなくなる混沌とした状況を描いている。

突然走ってきたバスにひかれ、ヨンイルの目の前で死んだチームの最年少メンバーが最後まで信じられないとし、「これは事故ですよね?」と尋ねるシーンは意味深い。事故に見せかけて事件を仕組んだ者たちが、結局そのように最後の瞬間まですべてを疑う立場に立たされるということを示しているからだ。まるで自分たちで作り上げた世界に閉じ込められているかのようだ。最近陰謀論が増えた理由も、さほど変わらないだろう。もはや実際の事故でさえ事件と思われるほど、信頼を与えられない社会が、あらゆる陰謀論の原因であるはずだからだ。