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[オピニオン]無知と盲信

Posted June. 13, 2024 08:39,   

Updated June. 13, 2024 08:39

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聖書や神話、文学は多くの画家にとってインスピレーションの源となってきた。18世紀のイタリアの画家ジョヴァンニ・ドメニコ・ティエポロは、聖書や神話の物語を生き生きと描き、大人気を博した。この絵は、ギリシャ神話に登場する伝説的なトロイ戦争の一場面を描いている。タイトルも「トロイの木馬の行列」(1760年頃・写真)。

ティエポロは大きな油絵のための習作としてこの絵を描いたが、イメージはローマの詩人ウェルギリウスが書いた「アイネイス」を参考にした。ユニークなのは、木製の馬を実際の馬のように描いたこと。筋肉質やたてがみ、尾の質感をできるだけリアルに表現し、リアリズムを高めている。トロイの民衆は、非現実的なほど大きな白馬を城へ運び込んでいる。左側の頑丈な兵士と男たちは後ろから馬を押しており、女性と子供を含む右側の群れは馬の体に結ばれたロープを前方に引っ張っている。木馬の中に隠れているギリシャ兵に征服されるとは夢にも思わず、神からの贈り物だと思って喜んで運んでいるのだ。

画面の中央には、トロイ王の娘カサンドラが捕らえられる場面が小さく描かれている。木馬が城内に入ると災厄が訪れると警告した人物である。同じ警告をしたトロイの神官ラオコーンも二人の息子と一緒にヘビに巻き付かれ、悲惨な死を遂げた。画家は馬の側面に「PALADI VOTUM(パラディ・ボトム)」というラテン語の文字を刻んだ。「パラス(アテナ)に捧げる供物」という意味で、パラスは知恵と勇気、戦争の神である。

残念ながら、戦争の神はトロイの味方ではなかった。トロイ人には知恵も勇気もなかった。王は愚鈍で、軍隊と民衆は盲目的だった。真実を語る者を抑圧し、彼らが死ぬのを傍観した。18世紀の絵が伝えるメッセージは明確だ。指導者の無知と国民の盲信が結局、国の破滅につながるということだ。