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欧州の極右政治家たち、短くて強烈な「TikTok」映像で若者にアピール

欧州の極右政治家たち、短くて強烈な「TikTok」映像で若者にアピール

Posted June. 22, 2024 08:56,   

Updated June. 22, 2024 08:56

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「『極右派』ではなく『愛国派』と呼んでください」

フランスの極右政党、国民連合(RN)の青年組織であるRNJでジロンド地域代表を務めているオアダ・ヤニス氏は18日(現地時間)、東亜(トンア)日報のインタビューで、「極右という表現を正したい」と語った。ヤニス氏はRN支持について、「極左やマクロン大統領が国を無茶苦茶にするのを見るのに疲れた」とし、「まともな国を取り戻したい」と話した。

6~9日に行われた欧州議会選挙で、マクロン氏が率いる中道の与党再生が、極右のRNに大敗したことで、フランスでは政治的混乱が続いている。マクロン氏は議会を解散し、30日に第1回投票、来月7日に決選投票を実施する早期総選挙を発表した。極右支持者たちは、「政権交代のチャンス」と歓喜する一方、中道・左派は「極右を阻止しなければならない」と戦意に満ちている。

欧州を席巻する極右旋風で最も目を引くのは、極右政党を支持する若者が急増したということだ。フランスやドイツだけでなく、オランダ、イタリアなど欧州各地で前例のない極右ブームが巻き起こっている。過去、欧州の極右支持者は比較的少数派で、目立たないように活動していた。しかし、最近、極右勢力は青年層を中心にインスタグラムやTikTokなどのソーシャルメディアを前面に押し出し、自身の政治的志向を堂々と明らかにしている。

東亜日報は最近、欧州における極右の台頭と関連して、実際に極右政党に所属している3人の青年にインタビューを行った。彼らには、「極右」といえば思い浮かべるような強硬な態度はみられなかった。むしろ、ソフトで親しみやすく答えるのが印象的だった。「私たちの政党を取材してくれてありがとう」「助けが必要な時はいつでも連絡してほしい」と好意的だった。

●「グレタ世代」の代わりに「青年極右」の台頭

元来、20、30代の若い有権者は進歩的な傾向が強い。特に、環境にやさしい政策に対する支持が強く、欧州の青年層はスウェーデンの若い環境活動家グレタ・トゥンベリさんの名前にちなんで「グレタ世代」と呼ばれている。彼らの支持を受けた進歩性向の緑の党は、2019年の欧州議会選挙で全体議席の10%を占め、4位になったこともある。

しかし、今年の欧州議会は大きく変わった。既存の第1党である中道右派の欧州人民党(EPP)と中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)、中道の欧州刷新(Renews Europe)が上位3位を占めたのは同じだ。しかし、極右2大政党の「欧州保守改革グループ(ECR)」と「アイデンティティと民主主義(ID)」が4、5位に入った。2つの極右政党が連帯すれば、2位政党の議席に匹敵する。

現地では、欧州の政治地形図で辺境に留まっていた極右政党が躍進したのは、若い極右支持者の力が決定的だと分析している。むろん、20、30代の若年層は全体的にまだ進歩的な傾向が強い。しかし、非常に速いスピードで「右傾化」の兆しを見せている。

英紙フィナンシャル・タイムズが3月、世論調査会社フォーカルデータに依頼して調査した結果によると、フランスの18~24歳の有権者の35.8%がRNを支持した。25~34歳のRN支持率はこれより高い39.1%だった。若い有権者10人に3、4人が極右政党を支持したことになる

オランダも18~34歳の30%以上が極右の自由党(PVV)を支持した。スウェーデンも同様だ。極右のスウェーデン民主党(SD)が20%前後の支持を受けた。イタリアの「イタリアの同胞(Fdl)」、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」なども支持率がそれぞれ15%前後と決して少なくない。

特にフランスでは、RNが与党の再生を2倍以上の支持率で破り、その原動力となった若い極右がより注目されている。RNの青年団体で30歳以下なら誰でも加入できるRNJは、フェイスブックのフォロワーが約8万人。各種ソーシャルメディアを武器に若い有権者を攻略したと評価されている。

東亜日報とインタビューした極右政党の青年たちには共通点があった。自分を「極右」という枠に閉じ込めようとしなかった。「国家と民族を第一に考える青年と見てほしい」と口をそろえた。陣営の論理に閉じこもって硬直化するのではなく、開かれた態度で国の役に立ちたいということだ。極右政党RNのジョルダン・バルデラ党首(29)も22年11月、現地メディアとのインタビューで、「バルデラ主義(バルデラの理念)をどのように定義するか」という質問に、「常識と実用主義の一形態」と答えた。民族主義や国家優先主義といった従来の極右の伝統的なレトリックは出てこなかった。既存の極右と比較すると、脱理念的と言える。

●「不安の時代、安定を求める」

RNJの青年党員はRNを支持する理由として、「不安な社会で安定を求めたいから」と答えた。現在、欧州は地政学的に移民が急増する中、経済難やウクライナ戦争など様々な悪材料が重なっている。不安定な現実に未来まで不透明になった青年たちは、反移民、民族主義を掲げて現実を変えようとする極右政党にむしろ安定を感じるのだ。

バルデラ氏のインスタグラムのファンアカウントを運営するアダン・ウチ氏も「フランスには経済、移民や安全保障問題など、あまりにも多くの不安要素が存在する」とし、「フランス人は安定を取り戻したくてRNを支持する」と語った。

欧州は、欧州議会発足以降、経済難がますます深刻化している。欧州連合(EU)加盟国の国内総生産(GDP)増加率は、欧州議会選挙があった19年に1.98%だった。しかし、パンデミックに見舞われ、20年にはなんと-5.56%まで落ち込んだ。むろん、翌年は5.91%と再び上昇したが、前年の逆成長による基底効果が大きかった。経済はその後も減速し、昨年は「0%台の成長」にとどまった。今後5年間の成長見通しも1%台にとどまる。

22年のロシアのウクライナ侵攻は、より大きな悪材料だった。原材料価格が急騰し、経済難を悪化させた。戦争は、経済難だけでなく安全保障の不安まで高めた。フランスでは、マクロン氏が派兵の可能性を再び口にすると、若者たちが反発し、抗議集会を開いた。ロシアのプーチン大統領が、「いつでも欧州の他の国も侵攻する可能性がある」と発言したことでドイツや英国などが徴兵制の議論に入ったことも、若者を不安にさせた。

不安な若者は、現権力に対する不満を募らせた。英紙タイムズは、「24年の世界幸福度報告書によると、若者たちは既成世代より幸せではない」とし、「若者の一部は地球温暖化と戦っているが、沈黙している多数の若者は生存の質を心配している」と伝えた。ドイツの青少年研究者であるサイモン・シュネッツァー氏はFTに、「現在の若い世代は本当に悲観的だ」とし、「お金が不足して自分たちが育った生活水準を維持することができないと考える」と伝えた。

●「傲慢な権力者は嫌い」

「マクロン大統領や政治家たちは傲慢だ」

フランス・パリ郊外のイル・ド・フランスのヴァル・ド・マルヌでRNJ党員として活動するガブリエル・デュランさんは、既成政治家に対する嫌悪感からバルデラ氏を支持するようになった。マクロン氏が年金改革を議会の同意なしに強引に進めるなど、各種改革に強烈なドライブをかけたことがむしろ反感を買ったのだ。対国民演説で意思疎通を図るものの、「一方的な説得」という批判も少なくない。

米国の政治専門メディア「ポリティコ」は、「20年のパンデミック当時、欧州の指導者たちが下した封鎖命令は、『政治エリートは強圧的』という認識を定着させた」とし、「このような不満は、多くの欧州の右派有権者の間に深く根付いている」と説明した。

一方、最近、極右政治家たちは気さくに意思疎通するイメージを前面に打ち出した。ポリティコは、「バルデラ氏は、政治集会に登壇する前に投稿した映像で、『スーツにアイロンをかけるのが面倒でジーンズを着た』と発言し、多くのコメントと共感を得た」と伝えた。

こうしたことから極右の若者の目には、現権力者たちは傲慢で無能な「オヤジ」に映っている。ユーラシアグループ傘下のグローバル問題研究所のルーカス・ロビンソン研究員はタイムズに、「極右政党に対する青年層の支持は、政界や政府が社会問題の構造的な原因を解決できず、青年たちが欲求不満を抱いていることを意味する」と分析した。

一部では、このような若い極右の台頭にもかかわらず、青年たちが本質的に右派に転向したわけではないという見方もある。いわゆる反政府感情を表出する方法という解釈だ。オランダの政治学者キャサリン・デ・ヴリーズ氏は、英紙ガーディアンに、「若い有権者と極右の間に文化的、理念的な同質性があるという仮定は注意しなければならない」とし、「多くの国で若者が高齢の有権者より外国人嫌悪になったわけではない」と主張した。

若い有権者は多様に断片化されているため、一つの断面が右傾化に映ったという分析もある。米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」は、「昨年8月のユーガブの世論調査によると、若い欧州人は気候危機に圧倒的に懸念を示し、行動しようとする意志が中高年層よりはるかに高かった」とし、「ドイツの別の世論調査でも、若い層の関心の上位には人権侵害と気候変動、セクハラ、児童虐待が挙がっている」と伝えた。

趙은아 achim@donga.com