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聖者と野獣の間

Posted June. 27, 2024 08:48,   

Updated June. 27, 2024 08:48

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画家のポール・ゴーギャンは、純粋で原始的な世界に憧れていた。1891年、南太平洋のタヒチ島に発つ直前に「<黄色いキリスト>のある自画像」(1890~1891年・写真)を描いた。画面の外の観客を重く凝視する画家の後ろに、十字架にかけられたイエスがいる。彼はなぜ自画像に黄色いイエスを描き入れたのだろうか?

ゴーギャンは、アルルでファン・ゴッホと喧嘩後、ポン=タヴェンに戻った。あそこで「黄色のキリスト」を描いた。自画像に登場したイエスは、まさにこの絵の一部だ。原本とは異なり、絵の左右が変わったのは鏡を見ながら描いたためだ。絵の中のイエスは、ポン=タヴェン教会で見たイエス像をモデルにした。実物も黄色く塗られたイエス像だった。希望を象徴する黄色は、ゴーギャンが一番好きな色でもあった。たとえこの絵を描いた当時は、人生の底を打っていたが、タヒチ島に行っては自分が望む芸術をしながら成功できるという希望を抱いていた。

画家になる前、ゴーギャンはいくつかの職業を経て証券取引所で働いた。余剰資金で美術品を収集するほど経済的にも豊かだった。そうするうちに絵を描き始め、30代半ばに専業画家に転向した。扶養しなければならない子供が5人もいる家長なので、皆が引き止めたにもかかわらずだ。結局、生活苦でデンマーク人の妻は子供たちを連れて故郷に帰ってしまった。だから家族に捨てられ、画家として認められない苦痛をイエスの苦難に例えたのだ。

イエスは、苦難と救いの象徴的人物だ。人間を救うために自分を犠牲にした聖者だ。ゴーギャンは、自分の成功と欲望のために苦難を自任した。本人も純粋な芸術の追求と世俗的欲望の間で苦悩したはずだ。そのためか、イエスの隣に歪んだ顔を持つ壺を描き、自分の野獣のような性格と苦痛を表現した。結局、この自画像は、聖者と野獣の間で苦悩するが、最後には勝利するという画家の宣言なのだ。