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炎が飲み込んだあの瞬間、政治家は来るべきだったのか

炎が飲み込んだあの瞬間、政治家は来るべきだったのか

Posted July. 01, 2024 08:19,   

Updated July. 01, 2024 08:19

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先月24日、計23人の命を奪った京畿道華城市(キョンギド・ファソンシ)のリチウム電池メーカー「アリセル」の火災現場で、消防士らは難関に直面していた。犠牲者たちは炎に包まれた工場の建物の2階に集まっていた。サンドイッチパネルで作った外壁が崩れ、内部への進入が不可能だった。捜索は2時間41分間中断された。リチウムにより燃え上がる火は、水で消すのが難しかった。火の手は長時間抑えられなかった。事故発生から12時間近く経った当日午後9時55分になって、非常対応段階は2段階から1段階に下がった。その時も依然として、最後の行方不明者を見つけられない状態だった。

事故当日、現場には政治家たちが相次いで訪ねてきた。その始まりは、与党「国民の力」の党代表候補として出馬した元喜龍(ウォン・ヒリョン)前国土交通部長官だった。元氏は火災発生時間(午前10時31分)から約7時間20分過ぎた午後5時50分頃に訪ねてきて、「犠牲者が多い可能性があるというので、何の情報もなしにひとまず走ってきた」と話した。1時間半後の午後8時50分頃は、国民の力の執行部が、さらに30分後は最大野党「共に民主党」の執行部が訪れた。午後10時40分は、国民の力の党代表候補の韓東勳(ハン・ドンフン)前非常対策委員長も訪れ、約30分間、現場に滞在した。政治家たちはカメラの前で消防当局から状況報告を受け、そのシーンをマスコミに公開した。このような風景が繰り返された。

彼らは、政治が傷ついた国民のそばにあるということを見せたかったのかもしれない。実際、誰かは慰められたかもしれない。しかし、当時は依然として最後の行方不明者を見つけられなかった時点だった。政治家たちが災害現場に来れば、案内や儀典、ブリーフィング、そして彼らが帰る途中にしなければならない見送りまで現場の人材が動員される。消防士の本業は、人を生かして火災を鎮圧することであって、儀典と報告ではない。もちろんこれをしなければならない状況もあるが、少なくとも炎が燃え上がっているその瞬間はない。リアルタイムのテレビ会議やテレビ電話まで可能な最近、政治家たちが現場に現れて報告を受けることが本当に必要だったのだろうか。

もう少し慎重だったなら、少なくとも現場収拾が終わった後に、消防士たちが息をつくことができた時に訪ねてくるべきだった。そうしてこそ、問題点を把握し、改善策も議論できる。2014年4月16日のセウォル号惨事の当時も、政界では、「政治家たちが直接酸素ボンベを背負って入って救助活動する計画でないならば、現場訪問は自粛しなければならない」という自省論が出てきた。

大型災害の度に繰り返される政治家たちの現場訪問のイベントは、人命救助と事故収拾に役立たないという指摘が、消防当局の内部から持続的に出ている。2021年、京畿道利川市(キョンギド・イチョンシ)のクーパン物流センター火災の際、1人が死亡した。当時、消防当局の匿名掲示板には、「政治家が訪問すれば、儀典と写真撮影などで収拾活動の妨害になる」と直撃する文が掲載された。その文の作成者は、「訪問を最小化し、消防公務員が安全に活動できるように助けてほしい」とも訴えた。何人かの高官は、このような事例を記憶したのか、今回は事故当日を避けて訪問した。このような人が多くなるほど、消防士は本業に集中できるだろう。

政治家の訪問が少なくなった事故の翌日(先月25日)午前11時52分、消防士たちは最後の行方不明者の遺体を収拾した。