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おいしい希望

Posted July. 03, 2024 09:05,   

Updated July. 03, 2024 09:05

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1971年冬の束草(ソクチョ)空港、旅客機機長のキュシク(ソン・ドンイル)は、テイン(ハ・ジョンウ)が吸っているタバコを見ながら聞く。テインがただ模様がきれいで吸うタバコの名前は「希望」だ。すれ違うシーンだが、その台詞はこれから起こる途方もない事件に対する伏線を盛り込んでいる。その「希望」を何も考えずに吸う時までは、金浦(キムポ)空港まで行く民航機に自家製爆弾を持ったテロ犯が登場するとは、彼は全く知らなかっただろう。そのテロ犯がいきなり爆弾を爆発させ、北朝鮮に行こうと威嚇する状況はなおさらだ。しかし、希望とは、ただ平凡な日々の中ではあまり重要ではないが、極端な状況に至って初めて思い浮かぶ単語ではないだろうか。テインは結局、その希望一つをつかみ、テロ犯を説得し、脅したり、時には死闘を繰り広げた末、結局、義人の選択まですることになる。

キム・ソンハン監督の映画「ハイジャッキング」は、1971年に実際に起きた大韓(テハン)航空機拉致未遂事件を素材にした。当時、テロ犯が制圧される過程で爆弾が落ちて点火されると、見習い操縦士だったチョン・ミョンセ氏は、乗客を保護するために身を投げて爆弾を覆うことで被害を最小化した。テロ犯は射殺されたが、2度の爆発で飛行機はエンジンを失い、墜落の危機に置かれる。しかし、機長が高城(コソン)の海辺に非常着陸を成功させたことで、乗客全員は安全だった。チョン・ミョンセ氏は重傷を負って結局移送中に死亡したが、この危機的状況における唯一の犠牲者だった。

映画でテロ犯のヨンデ(ヨ・ジング)は、「このまま行けば、死ぬかもしれない」というテインの言葉に、「死ぬより生きることの方がもっと怖い」と話す。何の希望も見出せない者の叫びは、テロ犯とはいえ寂しく感じられる。希望の味を感じることができる社会こそ、誰かの犠牲なしに皆が生存できる足掛かりになるのではないか。