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スーパーカーに乗らないオーナーなら相続税を下げてあげてもいいだろう

スーパーカーに乗らないオーナーなら相続税を下げてあげてもいいだろう

Posted July. 05, 2024 08:34,   

Updated July. 05, 2024 08:34

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2018年5月、ドイツの科学技術企業メルクの創立350周年記念式が行われた。メルケル首相(当時)が祝辞を終えると、創業者の11代目の孫である家族委員会会長のフランク・シュタンゲンベルクハバーカンプ氏は、「相続税を少し下げてほしい」と答辞を述べた。「半分冗談、半分本気」のユーモアで、メルケル氏を含む出席者900人余りの笑いを誘った。

この事例を見ると、相続税は13代にわたって家族経営を続けてきたメルクにとっても重要な問題であることが分かる。相続税を払うために株を売却すれば、外部の経営権攻撃に脆弱になるのは必至だからだ。

ドイツの相続税はスウェーデンやオランダ、フランスなどより厳しいが、韓国よりは寛大だ。まず最高税率が30%で、韓国(50%)よりも低く、「家業相続控除」を通じて相続後、数年間株を保有したり雇用を維持したりするなど、要件を満たせば税額を一部控除してくれる。相続規模が大きければ大きいほど控除幅は減るが、韓国のように最初から大企業を対象から除外することはない。2021年のドイツでの家業相続控除件数は1万1874件、金額では2兆4760億ウォンにのぼった。

家族経営のメリットは、短期的な業績にこだわらず、長期的な視野で企業を導くことができることだ。メルクは2004年に液晶表示装置(LCD)研究100周年を迎えた。メルクが液晶という物性を発見したのは1904年、LCD市場が開花したのは90年代だ。その間、メルクは製薬事業で稼いだ金でLCD研究を続け、源泉技術を確保した。

韓国の産業界には4大経営まで登場した。彼らが百年先を見据えた研究開発を推進するには、安定的な承継計画が必要であり、この過程で相続税を考慮しないわけにはいかない。しかし、相続税の緩和が「富の継承」手段に変質しないためには、家族経営企業の努力が必要だ。

メルク家にはいくつかの原則がある。13代にわたって株を保有している家族は200人を超えた。しかし、このうち18人だけが家族委員会(13人)とパートナー委員会(5人)を通じて専門経営者を選任する方式で経営に関与している。大型M&Aや大きな枠組みの戦略を変えることを除けば、ほとんどは専門経営者の決定に任せる。その代わり、両委員会の会長は、最高経営陣5人と共に退社後5年まで会社に対して無限の責任を負う。

オーナー家だからといって入社に「フリーパス」はない。入社するには、他の会社で能力を認められてから上級職に志願するしかなく、徹底した検証を経なければならない。家族委員会の会長は75歳が定年だ。所有と経営を独占しようとする弊害をなくすためだ。シュタンゲンベルクハバーカンプ氏の普段の自慢は、「200人を超えるメルクファミリーのうち、スーパーカーに乗る人は一人もいない」ということだった。かつてシュタンゲンベルクハバーカンプ氏が東亜(トンア)ビジネスレビュー(DBR)とのインタビューで言及した長寿の秘訣である「家族構成員自身がメルクのオーナーとは考えず、後世のために信託を管理する人たちだと考える価値観」と一致する。

革新を夢見る企業の投資、ノブレス・オブリージュを実践するオーナー家の誠実さが組み合わされた時、企業の永続を応援するための制度改編の議論が社会的支持を得ることができる。