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弱さを見せることができる「本物の男」アンディ・マリー

弱さを見せることができる「本物の男」アンディ・マリー

Posted July. 13, 2024 08:49,   

Updated July. 13, 2024 08:49

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アンディ・マリーの最後のウィンブルドンが終わった。今年の大会開幕10日前に腰の手術を受けたマリーは、シングルスを諦めてダブルスにだけ出場した。ウィンブルドンも、ダブルス1回戦の試合を異例にもセンターコートに割り当ててマリーに敬意を表した。ウィンブルドンのセンターコートは、マリーがイギリスのテニスの神話を書いた場所だ。2012年、イギリス選手としては76年ぶりにウィンブルドン男子シングルス優勝に挑戦したマリーは、決勝で「皇帝」ロジャー・フェデラーに敗れ、涙を流した。1ヵ月後、同じ場所で開かれたロンドン五輪男子シングルス決勝でフェデラーを破り、金メダルを手にした。そして翌年、ウィンブルドン開催国のイギリス勢として77年ぶりに男子シングルスで優勝した。

16年のウィンブルドン優勝でメジャー大会通算3勝を達成したマリーは、その年に世界ランキング1位まで上がり、イギリス王室からナイトの爵位を授与された。人々は「ビッグ3」(フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ)に加えて「ビッグ4」の時代が開かれると言った。しかし、ビッグ3が相次いでメジャー大会通算20勝を記録する間、マリーは1勝も追加できないままメジャー大会に別れを告げた。マリーの最後も神話とは程遠いものだった。マリーがダブルス1回戦で敗退した後、電光掲示板にはマリーに捧げる映像が流れた。BGMはイギリスのロックバンド、レディオヘッドの「クリープ(Creep)」だった。

「俺が特別だったら良かったのに。お前はクソ特別だ。でも俺は風変りだ。...ここは俺の居場所じゃないのに(I wish I was special. You're so fuckin' special. But I'm a creep...I don't belong here)」。歌詞は、ビッグ3に並ぶことができなかったマリーのキャリアに似ている。マリーは、メジャー大会の決勝に11回出場したが、フェデラーに3回、ジョコビッチに5回優勝を奪われた。一部のファンは、「クリープ」はマリーの最後を記念するにはあまりにも残酷で、不適切な選曲だと言った。

しかし、マリーは続いて行われたインタビューで、自分が一番「かっこ悪い」瞬間を列挙した。18歳の時、今の妻に初めて会った日にメールアドレスを尋ねたこと、妻が初めて試合を見に来た時、2回も吐いたにもかかわらず、自分を好きでいてくれて「本物だ」と思ったという告白....。キャリアの頂点に立った16年のウィンブルドン優勝の感想を聞いても「ほとんど覚えていない。お酒をかなり飲んで、家に帰るタクシーの中で吐いた」と笑うだけだった。

世界最高のテニス大会、その中でもトップだけが立つことができるセンターコートでの最後の瞬間、マリーは「イギリスのテニスヒーロー」ではなく「かっこ悪い人」として残ることを選んだ。「脆弱性(vulnerability)」を研究した社会福祉専門家ブレネー・ブラウン氏は、他人に隠したい自分の恥ずかしい面を明らかにするのは、強い者だけができることだと言った。不完全な、ありのままの自分を受け入れる勇気がなければできないことだからだ。

ビッグ3とメジャー大会で優勝を争わなければならなかったマリーに、人々は「時代を間違えた」と言った。しかし、マリーは「他人はどう見るか分からないが、私は毎日同じ情熱と献身を注いだ自分のキャリアを誇りに思っている」と話す。17年から股関節、腰の怪我で平凡な選手になった後も、マリーは欠かさずコートで勝てなかった相手に握手を求めた。「完璧な私」、「かっこ悪い私」をすべて同じ「私」として受け入れたマリーが本物の男である理由だ。