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バッハの無伴奏チェロ組曲は「妻が作曲」?

バッハの無伴奏チェロ組曲は「妻が作曲」?

Posted July. 13, 2024 08:49,   

Updated July. 13, 2024 08:49

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「私たちは、楽長のポストに女性を雇わないことをお知らせすることになり残念です。私たちのオーケストラには、すでに多くの女性演奏者がいますが、一番前の席は男性で満たされることを望んでいます。(中略)オーケストラの一番前の席は男性が座る方が良いと、人生は私たちに教えてくれました」

スイス出身の女性ヴァイオリニストであるマドレーヌ・カルッツォは、1982年、チューリッヒ・チェンバーオーケストラの楽長オーディションに応募した時、このような手紙を受け取った。怒ったカルッツォは同年、他のオーケストラのオーディションを受け、1882年に創立されたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団100年の歴史上初の女性演奏者(団員)になった。女性団員を認めたベルリン・フィルでさえ、同年、終身指揮者カラヤンが首席クラリネット奏者に任命した女性演奏者(ザビーネ・マイヤー)は反対した。指揮者と団員たちとの対立が激化すると、マイヤーは翌年、自らベルリン・フィルを退団した。マイヤーは、今では「クラリネットの女帝」と称されている。

この本は、足を広げて演奏するチェロは静粛な女性に似合わないというような性差別がいっぱいだった時代、自分の才能を広げるために孤軍奮闘した女性音楽家たちに関する話だ。クラシック専門のジャーナリストである著者は、女性という理由で音楽院への入学を拒否され、ひどい場合はオーケストラが演奏を拒否する世の中で、自分の名前を明らかにして堂々と活動できる女性音楽家はほとんどいなかっただろうと話す。

このような理由から、多くの才能ある女性音楽家たちの名前が歴史の中で消されたが、著者はある研究結果を引用して、「神の声」とも表現されるあの有名なバッハの「無伴奏チェロ組曲」も、バッハの2番目の妻であるアンナ・マグダレーナ・バッハが作曲しただろうと主張する。著者は、男性の活躍を縮小するためではなく、認められる価値のある話を正当に評価するために書いたと話す。

挑発的な本のタイトルは、モーツァルトが女性だったという意味ではない。名字だけ聞いても天才的な白人男性を思い浮かべるクラシックの世界の裏に、弟のように優れた音楽家だったが、女性だという理由で舞台から消えた姉(マリア・アンナ・モーツァルト)のような人が多かったことを逆説的に喩えたのだ。


李鎭求 sys1201@donga.com