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政争の道具に転落した米連邦最高裁判事の終身制

政争の道具に転落した米連邦最高裁判事の終身制

Posted August. 03, 2024 10:51,   

Updated August. 03, 2024 10:51

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三権分立、特に司法府の独立は、米国が最強大国になった主要な原動力として挙げられる。特に、9人の連邦最高裁判事を終身とし、所信判決を保障したことが功を奏した。その背後には、自分の意向と違っても司法府の判断を尊重した歴代大統領、退陣の時を判断して自ら辞任した数人の最高裁判事の賢明な決断もあった。

ただ、自分の思い通りに司法府を左右しようとする最近の前・現職のホワイトハウスの主、「勇退」を知らない最高裁判事があふれる昨今の状況を見ると、この美しい伝統も寿命が尽きたようだ。

まず、バイデン大統領。9人の最高裁判事のうち6人が保守的である今の最高裁の人的構成を一新するために、最高裁判事の任期を18年に短縮する法案を発議する意向を明らかにした。下院多数党である共和党の反対で議会を通過する可能性がないことを知りながらあえて公論化したのは、最高裁の人工妊娠中絶権やマイノリティ優遇政策の廃棄、共和党大統領候補のトランプ前大統領に下された相次ぐ有利な判決に反発する進歩性向の有権者を11月の大統領選挙前に結集させる目的が大きい。

この試みは「ネロナムブル(自分がやればロマンスだが、他人がやると不倫)」批判から自由ではない。バイデン氏と民主党は、進歩的な裁判官が今より多かった時は終身制を特に問題視しなかった。にもかかわらず、大統領選の3ヵ月前に建国後248年間維持された制度を突然変えようとすれば、その真意を疑わない者がいるだろうか。

トランプ氏もネロナムブルなら負けない。2016年2月、保守性向のアントニン・スカリア最高裁判事が死亡すると、オバマ大統領(当時)はメリック・ガーランド司法長官を新しい最高裁判事に指名した。トランプ氏は、「任期最終年の大統領がなぜ終身職を任命するのか」と断固反対した。当時、共和党も議会多数党の立場を前面に押し出し、オバマ氏の意向を覆した。そんなトランプ氏は、退任4ヵ月前の2020年9月、「進歩のアイコン」ルース・ベイダー・ギンズバーグ元最高裁判事が死亡すると、直ちに当時48歳の若い保守寄りの最高裁判事エイミー・バレット氏をその座に就けた。

一部の最高裁判事の処遇も問題視されている。9人の最高裁判事の中で最高位のクラレンス・トーマス氏は、数回の接待、妻のバージニア州の2020年大統領選挙結果の不正疑惑などで最高裁判事の名誉を失墜させたという批判を受けている。33年間最高裁判事を務め、様々な物議を醸した76歳の最高裁判事に、あえて終身を保障しなければならないのか。サミュエル・アリート最高裁判事も、20年の大統領選挙の不服の象徴「逆さまの星条旗」を自宅に掲げ、政治的偏向論議を起こした。

男女平等判決などで生前、称賛されたギンズバーグ氏も、退陣時期を逃したという批判を死後も受けている。ギンズバーグ氏は14年、オバマ氏が辞任を勧めたが拒否した。進歩陣営は、このようなギンズバーグ氏がトランプ政権時代に亡くなったため、バレット最高裁判事がその座を引き継ぎ、最高裁の保守化も加速したと不満だ。「バイデン大統領が残りの任期中に若い進歩的な最高裁判事を任命できるように進歩的な3人の最高裁判事のうち最年長の70歳のソニア・ソトマイヨール最高裁判事が今すぐ辞任すべきだ」と主張する人もいる。

米国人の平均寿命が38歳にすぎなかった建国当時に採用した最高裁判事終身制を時代の変化に合わせて変えようという主張は妥当だ。しかし、権力者がこれを政派的な目的にのみ利用しようとし、最高裁判事個人も「知恵の九つの柱」に相応しく振る舞わなければ、任期を減らしても何の意味があるだろうか。米国の民主主義が危機に直面していることをよく示しているのが、現連邦最高裁のようだ。