「ハリス旋風」を生み出す米民主党の切迫感
Posted August. 06, 2024 09:10,
Updated August. 06, 2024 09:10
「ハリス旋風」を生み出す米民主党の切迫感.
August. 06, 2024 09:10.
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ハリス米副大統領に対するワシントン政界の初期評価はかなり低かったと記憶している。4年前、ハリス氏がホワイトハウス入りして間もなく参謀数人が相次いで辞表を提出すると、「副大統領室の大脱出(exodus)」といったタイトルの記事が続いた。業務能力にリーダーシップまで俎上に上り、「人を包摂することができないのではないか」と囁かれた。ハリス氏の発言をいちいち分析し、支離滅裂な「ワードサラダ」の話法だと批判する論評もあった。核心や論理がなく、もっともらしいレトリックだけを無造作に混ぜているという指摘だった。米国の副大統領は実権が多くないため、メディアがあまり関心を持たない。そのような副大統領に対する批判的な記事が飛び交うのを見て、「白人男性でもそうなのか」と思ったこともある。混血で女性であるハリス氏に対する様々な批判に対して、実際に当時の副大統領室は、「人種差別のうえ性差別的な見方」と反発した。かつて弱点とされたハリス氏の性別と人種は、ハリス氏がバイデン大統領に代わって民主党大統領候補になったことで強みに変わりつつある。アジア系と黒人の両方の票を獲得できる多様性に注目するムードが強まった。やや軽薄に見えたハリス氏の笑い声も、瞬く間に魅力に変わった。豪快に笑う動画がコミカルなミーム(meme)で再構成され、若者のスマートフォンで拡散されている。ハリスでいいのか、と党内選挙を主張していた声は一気に消えた。瞬く間に代議員を確保したハリス氏は今、全国単位の支持率はもとより、重要な競合州の世論調査でもトランプ共和党候補を猛追している。ただでそうなったわけではない。ハリス氏の当選に向けて、民主党の名だたる選挙戦略家やソーシャルメディアの専門家たちが駆けつけた。党指導部は総力戦で支えている。米国初の女性大統領を生みだそうと女性界が再び結束し始め、大物支援者が続々と支援に乗り出し、巨額の選挙陣営資金を提供している。ハリス氏が先月集めた選挙資金だけで4千億ウォンを超える。恐ろしい結集速度だ。このような動きの根底には、トランプ氏に政権を譲れないという切迫感があるようだ。トランプ氏が再び大統領になれば、米国の民主主義はこのまま終わるという民主党関係者の吐露には悲壮感さえ感じられる。大統領選を覆そうとする試みや機密文書の流出、不倫口封じなど91の容疑で裁判を受けているトランプ氏に大統領の座を明け渡すことはできないという決意に満ちている。「トランプ氏は危険だ」と、トランプ氏の能力と資質、道徳性の問題を細かく指摘した米紙ニューヨーク・タイムズの異例の長い社説も背景は変わらないようだ。あるコラムニストは、オバマ元大統領の著書『大胆な希望』に例えて「大胆な切迫感(the audacity of desperation)」と表現した。その切迫感がバイデン氏の辞任決定を導き出し、今、「非白人女性大統領」という、民主党が行ったことのない道を狭くても切り開いている。民主党候補が誰であれ当選させなければならないという切実さにつながる。「やってみる価値がある」という認識が有権者を引き寄せる好循環につながり、敗色が濃かった民主党に再び活気が戻っていると、海外メディアは伝えている。支持する候補者の魅力よりも、「相手候補だけは絶対にダメ」という判断が選択の基準となる構図は、選挙の定石ではない。にもかかわらず、ハリス氏の台頭は一瞬にして大統領選挙の流れを変えたという点で、新しい選挙の歴史を書く過程である。多くの懸念があるが、まだ健在な米国のダイナミックな民主主義の現場を全世界が見つめている。
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ハリス米副大統領に対するワシントン政界の初期評価はかなり低かったと記憶している。4年前、ハリス氏がホワイトハウス入りして間もなく参謀数人が相次いで辞表を提出すると、「副大統領室の大脱出(exodus)」といったタイトルの記事が続いた。業務能力にリーダーシップまで俎上に上り、「人を包摂することができないのではないか」と囁かれた。ハリス氏の発言をいちいち分析し、支離滅裂な「ワードサラダ」の話法だと批判する論評もあった。核心や論理がなく、もっともらしいレトリックだけを無造作に混ぜているという指摘だった。
米国の副大統領は実権が多くないため、メディアがあまり関心を持たない。そのような副大統領に対する批判的な記事が飛び交うのを見て、「白人男性でもそうなのか」と思ったこともある。混血で女性であるハリス氏に対する様々な批判に対して、実際に当時の副大統領室は、「人種差別のうえ性差別的な見方」と反発した。
かつて弱点とされたハリス氏の性別と人種は、ハリス氏がバイデン大統領に代わって民主党大統領候補になったことで強みに変わりつつある。アジア系と黒人の両方の票を獲得できる多様性に注目するムードが強まった。やや軽薄に見えたハリス氏の笑い声も、瞬く間に魅力に変わった。豪快に笑う動画がコミカルなミーム(meme)で再構成され、若者のスマートフォンで拡散されている。ハリスでいいのか、と党内選挙を主張していた声は一気に消えた。瞬く間に代議員を確保したハリス氏は今、全国単位の支持率はもとより、重要な競合州の世論調査でもトランプ共和党候補を猛追している。
ただでそうなったわけではない。ハリス氏の当選に向けて、民主党の名だたる選挙戦略家やソーシャルメディアの専門家たちが駆けつけた。党指導部は総力戦で支えている。米国初の女性大統領を生みだそうと女性界が再び結束し始め、大物支援者が続々と支援に乗り出し、巨額の選挙陣営資金を提供している。ハリス氏が先月集めた選挙資金だけで4千億ウォンを超える。恐ろしい結集速度だ。
このような動きの根底には、トランプ氏に政権を譲れないという切迫感があるようだ。トランプ氏が再び大統領になれば、米国の民主主義はこのまま終わるという民主党関係者の吐露には悲壮感さえ感じられる。大統領選を覆そうとする試みや機密文書の流出、不倫口封じなど91の容疑で裁判を受けているトランプ氏に大統領の座を明け渡すことはできないという決意に満ちている。「トランプ氏は危険だ」と、トランプ氏の能力と資質、道徳性の問題を細かく指摘した米紙ニューヨーク・タイムズの異例の長い社説も背景は変わらないようだ。あるコラムニストは、オバマ元大統領の著書『大胆な希望』に例えて「大胆な切迫感(the audacity of desperation)」と表現した。
その切迫感がバイデン氏の辞任決定を導き出し、今、「非白人女性大統領」という、民主党が行ったことのない道を狭くても切り開いている。民主党候補が誰であれ当選させなければならないという切実さにつながる。「やってみる価値がある」という認識が有権者を引き寄せる好循環につながり、敗色が濃かった民主党に再び活気が戻っていると、海外メディアは伝えている。
支持する候補者の魅力よりも、「相手候補だけは絶対にダメ」という判断が選択の基準となる構図は、選挙の定石ではない。にもかかわらず、ハリス氏の台頭は一瞬にして大統領選挙の流れを変えたという点で、新しい選挙の歴史を書く過程である。多くの懸念があるが、まだ健在な米国のダイナミックな民主主義の現場を全世界が見つめている。
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