Go to contents

「韓中日漆器」に見る「文化変容」の力

Posted August. 15, 2024 09:14,   

Updated August. 15, 2024 09:14

한국어

最近見学した国立中央博物館の「韓中日漆器特別展」を一言でまとめると「三国三色」だ。木に漆を塗る漆器工芸品は、他の文明圏とは明確に区別される東アジアのユニークな文化遺産である。韓中日3ヵ国に自生する漆の樹液は、他の地域と区別される深い光沢を持ち、新石器時代から木器を装飾し、耐久性を高める天然塗料として使用されてきた。中国・杭州の跨湖橋遺跡で発見された漆弓は、紀元前6千年頃に制作された世界最古の漆器で、中国に由来する漆器制作技術が朝鮮半島と日本列島に伝わったことを示す。

しかし、特別展に展示されている14~19世紀の3ヵ国の漆器は、同じルーツとは思えないほど、それぞれ独特の趣を誇っている。例えば、第1部展示の目玉である中国・清朝の「彫漆山水・人物文様運搬箱」は、それ自体が一幅の精緻な山水人物図を思わせる。中国特有の彫漆(何度も  漆を塗り重ねた後に様々な模様を彫り込むこと)技法により、赤い漆の上に山や東屋、柳の生い茂る庭園、散歩する士人などが生き生きと表現されている。これに対し、第2部展示の目玉である朝鮮時代の「螺鈿漆・双鳳梅文様箪笥」は、鳳凰を取り囲む貝がモザイクを成し、虹色の輝きを放ち、中世ヨーロッパの大聖堂のステンドグラスを彷彿とさせる。第3部では、日本の室町時代に制作された「蒔絵漆蓮池文様経典箱」が、漆の上に金粉をまぶして装飾する華やかな蒔絵の技法の真髄を見せる。仏経を納めた箱らしく、極楽浄土に咲く蓮の花を葉脈まで精巧に表現している。

韓中日3ヵ国の漆器のこのような独特の分化・発展は、文化において原型を模倣するだけでなく、独自の視点でそれを解釈・変容することが非常に重要であることを端的に示している。東京国立博物館の藤原誠館長が、今回の特別展の図録で、「共通の素材に対する3ヵ国の視点の違いが、(漆器において)多彩な技法とデザインという結実をもたらした」と評価したのも同じような意味合いだろう。

これは決して伝統文化に限った話ではない。「週末の名画」やVHSビデオなどを見て育った韓国の「ハリウッドキッド」が最近、世界のコンテンツ市場を席巻しているのは、人類普遍的な素材に韓国的な現実を加え、文化的変容を成功させた影響が大きい。奉俊昊(ボン・ジュンホ)監督の「パラサイト」がタルトンネと半地下の部屋、韓牛チャパグリなどの極めて韓国的な素材で社会の二極化という普遍的なテーマを興味深く扱ったのが代表的だ。最近、英国のブッカー賞最終候補に選ばれた黄晳暎(ファン・ソクヨン)の「鉄道員三代」やアップルTVドラマで制作され注目されたイ・ミンジンの「パチンコ」、米国のハーパーコリンズが2億ウォンで版権を買い取ったイ・ミリネの「名のない女の八つの人生」は、これまで世界の人々が注目しなかった韓国の近現代史を正面から扱った小説だ。

パンデミック以降、韓国映画の興行成績が低調だ。オンライン動画サービス(OTT)の台頭とスクリーンの独占などが原因として挙げられているが、今年5月のカンヌ映画祭でコンペティション部門に招待された韓国映画が1本もないなど、作品性が以前ほど良くないという指摘もある。「三国三色」の韓中日の漆器に込められた文化変容の力が再び発揮されることを期待したい。