11月に行われる米大統領選挙を前に、共和党大統領候補のトランプ前大統領と民主党大統領候補のハリス副大統領が、アジア系有権者を攻略するために激しい競争を繰り広げている。今年5月に発表された米人口統計局の資料によると、2022年基準3億3千万人の人口のうち、アジア系の割合は約7.5%(約2470万人)で、白人、ヒスパニック系、黒人など他の人種に比べて絶対数は多くない。
しかし、20年から24年までの4年間のアジア系有権者の増加率は15%で、ヒスパニック系有権者(12%)、黒人有権者(7%)よりも速いペースで増加している。また、ハリス氏とトランプ氏は、最近の各種世論調査で誤差の範囲内で激しい接戦を繰り広げている。両候補とも1票が惜しい状況であるため、アジア系の票を獲得して最終勝者になると意気込んでいる。
● アジア系票、超僅差の大統領選の一手
13日(現地時間)、米紙ニューヨーク・タイムズは、「アジア系有権者は米国で最も急速に成長している有権者層であり、典型的な流動層」と診断した。また、アジア系有権者の学歴も別の人種に比べて高く、政治性向よりも個々の候補者の魅力、政策の説得力などを見て一種の「投票ショッピング」をすると説明した。
アジア系有権者の投票率も急速に増加している。20年の大統領選当時、アジア系有権者の全国投票率は16年の大統領選より40%急増した。同紙は、「20年の選挙当時、全国有権者の割合で見ると、アジア系は4%にすぎず、15%に近かったヒスパニック系、黒人系より微々たるものだったが、24年の大統領選では、ほぼすべての州でアジア系の投票が勝利に影響を与えるだろう」と分析した。
特に、米50州のうち、大統領選の行方を左右するとみられるネバダ、アリゾナ、ジョージア、ペンシルバニア、ノースカロライナ、ミシガン、ウィスコンシンの7つの競合州で、アジア系有権者の票がその州の勝者を決めるという見方が多い。この7州で両候補の支持率差は、わずか1ポイント内外だ。
このため両党とも、韓国語、中国語、ヒンディー語など複数のアジア言語の郵便物を作成・配布し、それぞれの言語で新聞広告も掲載している。特に、7つの競合州のうち、アジア系有権者の割合が11%で最も高いネバダ州では、両党が激しい激突を繰り広げている。
21年現在、アジア系有権者の中で最も数が多いのは中国系(約280万人)。次いでフィリピン系(260万人)、インド系(210万人)、ベトナム系(130万人)、韓国系(110万人)だ。
● ハリス氏「初のアジア系大統領候補」を強調
ジャマイカ系黒人の父とインド系タミル人の母を持つハリス氏は、特にアジア系有権者の攻略に力を入れている。ハリス氏は、米大統領選に立候補した初のアジア系候補だ。
AP通信は、インド系女性というハリス氏のアイデンティティがジョージア州アトランタ周辺の多くのアジア系及び移民家庭に喜びをもたらしたと指摘した。多くの選挙専門家も、ジョージア州以外にもアリゾナ州、ネバダ州など主要競合州に大規模なインド系コミュニティがあることに注目している。インド系コミュニティの票が、20年の大統領選当時、バイデン大統領の勝利を導いた主な原動力だったという。
ハリス氏は過去、自身に「韓国系の親戚もいる」という点を何度も強調し、韓国系有権者にアピールした。ハリス氏の妹のマヤさんの夫は、オバマ元政権で司法次官を務めたトニー・ウエスト氏だ。ウエスト氏の妹が韓国系男性と結婚したことで、ハリス氏も韓国と縁を結んだのだ。
また、ハリス氏の選挙陣営は、アジア系有権者を担当するスタッフを複数配置している。最近では、競合州のアジア系有権者のためにさらに多くのスタッフを採用している。
米州韓人有権者連盟(KAGC)のキム・ドンソク代表は、「アジア系は大抵、政党を選択して有権者登録をしないため、大統領選のような本選挙で特に注目される」と指摘した。黒人は自分たちが公権力乱用の被害者という認識があり、ヒスパニック系は移民などの議題に敏感だが、アジア系は人種に関する特定の議題がない方で、政治的にも中道的な傾向が強く、両候補がどのような大統領選キャンペーンを展開するかによって、彼らの票が決まると予想した。
林雨宣 imsun@donga.com