ウクライナが、ロシア本土への地上戦を開始してから9日目の14日、ロシア領空に最大規模の「無人機(ドローン)空爆」を行った。ロシア南西部のクルスク州本土の占領速度が当初より鈍化したため、ロシア空軍の飛行場4ヵ所を攻撃して攻勢に出たのだ。
ウクライナのロシア領土進攻が10日近くになり、両国は互いに自国が有利な位置を占めたと主張している。一部では、予想以上にウクライナの波状攻勢が激しく、ロシアのプーチン大統領が適切に対応していないという分析も出ている。
● モスクワ東部領空までドローン攻撃
英紙フィナンシャル・タイムズによると、ロシア国防省は同日、「ウクライナ軍がモスクワから東に440キロ離れたニジニ・ノヴゴロド地域にドローンとミサイル117機を発射した」と明らかにした。ウクライナ軍はこのほか、現在占領中のロシア・クルスク州の一部と近隣のボロネジ、ベルゴロド州でも空爆を行った。
同紙は、ウクライナ保安庁(SBU)関係者を引用し、「ウクライナの長距離ドローンが戦争勃発以来、ロシア軍の飛行場に対する最大の攻撃を行った」と伝えた。特に、ウクライナが進撃しているクルスクとボロネジ、ニジニ・ノヴゴロドの飛行場4ヵ所が標的になったという。ウクライナ軍がロシア南西部の地上戦で目に見える成果を得た後、空路まで掌握しようとしている。
ウクライナのロシア本土占領については、双方の主張が対立している。ウクライナ軍は12日、「ロシアの領土1千平方キロメートルを制圧している」とし、13日には「1日に3キロ進軍し、40平方キロメートルをさらに制圧した」と明らかにした。一方、クルスク州のスミルノフ知事代行は12日、プーチン氏が招集した会議で、「ウクライナ軍が40キロの戦線で領土内12キロまでしか進入していない」と主張した。これはウクライナが主張した占領規模の半分にも満たない。
一方、ウクライナは占領したクルスク地域に「緩衝地帯」を設け、民間人を保護すると明らかにした。両国の民間人が自国に避難する通路を設けるという意味だ。米CNNによると、ウクライナのイゴール・クリメンコ内相は14日、テレグラムで、「クルスク地域に緩衝地帯を作るのは、国境地域を日常的な敵の攻撃から保護するための措置」と説明した。
● プーチン氏の「目と耳」に対応作戦を任せる
ウクライナのロシア本土への進撃は9日目に入り、やや速度が鈍化している。しかし、占領効果は相当なものとみられる。米紙ニューヨーク・タイムズは、「ロシアがウクライナの攻勢を撃退するために、自分たちが優位に立っていた戦線から一部の兵力を移動させている」と伝えた。
ロシアはクルスクの地上戦でさらに押される可能性も念頭に置いているようだ。英紙テレグラフによると、ロシア軍がクルスク戦線よりはるかに後方に離れた地域で塹壕を構築し始めた様子が衛星写真で確認された。これは、ロシアが領土奪還が短期間内に実現するのは難しいと判断したものと解釈される。
ロシアは、ウクライナの地上戦に対する対応戦略の変更も模索しているという。クルスク地域のニコライ・イワノフ下院議員は、地元放送RTVIに、「アレクセイ・デュミン国家評議会書記がテロ防止作戦を監督する任務を受けた」と明らかにした。デュミン氏は、プーチン氏の元警護員で、「プーチンの目と耳」と呼ばれる最側近だ。プーチン氏はデュミン氏に今回の地上戦の対応を直接総括させるものとみられる。
ウクライナのロシア本土占領が長くなり、プーチン氏も悩んでいるという報道が出た。英紙ガーディアンは、「侵略が長く続くほど、プーチン氏が単純なミスだと一蹴するのが難しくなるだろう」とし、「プーチン氏の対応は回避と縮小で揺れている」と指摘した。
趙은아 achim@donga.com