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「パワード・バイ」の時代が来る

Posted September. 03, 2024 09:12,   

Updated September. 03, 2024 09:12

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長女が先月、英国に留学する時だった。にわか雨が降り注ぎ、突風も吹いた。娘は、「飛行機が墜落するのではないか」と心配した。記者は、米国安全協会(NSC)のデータを話した。「飛行機事故で死亡する確率は1100万分の1だ。自動車事故で死亡する確率の65分の1に過ぎない。飛行機の事故が怖くて乗れないなら、自動車にはもっと乗ってはいけない」。その言葉に娘の恐怖はすぐに消えた。恐怖は状況がよく分からない時に生じる。

8月中、電気自動車の火災が韓国国内を熱く盛り上げた。仁川青羅(インチョン・チョンラ)国際都市のマンションの地下駐車場に駐車されていたベンツの電気自動車から火災が発生したことが発端となった。数秒間煙が立ち上り、突然爆発するかのように燃え上がる現場の防犯カメラの映像は衝撃的だった。じっと駐車されていた状態で起きた火災だったので、衝撃がなおさら大きかった。その後、記者が住むソウルのマンションは、地上に電気自動車の駐車区域を別に作った。全国が電気自動車の火災対策で騒然となった。

しかし、恐怖心が度を過ぎているのではないか。消防庁によると、昨年の車両1万台当たりの火災件数は、内燃機関車が1.9件、電気自動車は1.3件だった。電気自動車よりも内燃機関車の方が頻繁に火災が起きた。ただ、電気自動車は比較的最近普及し始めたので、新車なのに火災が起きるという点は考慮しなければならない。

2021~2023年の間、駐車中に火災が発生した電気自動車は全体の25.9%だった。内燃機関車は、消防庁に同じ統計がなかった。しかし、駐車場で火災が起きた内燃機関車は全体の18.5%ということを参考にすれば、内燃機関車も外部の衝撃なしに火災が発生したことが分かる。

最近の「電気自動車フォビア(恐怖症)」は、あまりにも行き過ぎであるだけでなく、技術の発展を見逃しているという気がする。バッテリーはまだ未完成の技術であり、進歩を続けている。例えば、バッテリーの頭脳とも言えるバッテリーの管理システム(BMS)は、ますます高度化している。BMSは、バッテリーに接続されたセンサーで、電圧やセル温度などバッテリーに関するすべての情報を測定し、バッテリーの異常状況をあらかじめ感知できる。

LGエネルギーソリューションや三星(サムスン)SDI、SKオンのバッテリー3社は、火災の危険性を大幅に減らした全固体バッテリーを開発している。韓国国内研究チームは最近、電解質で水を使用して火災の心配のないバッテリーの商用化のための技術を開発したこともある。数年後は、電気自動車の安全性はさらに高まるだろう。

実際の飛行機の技術発展が、その事実を証明している。米航空宇宙局(NASA)と連邦航空庁(FAA)は1984年、ボーイング720を故意に墜落させ、乗客の座席位置による安全度を実験した。2012年に再びNASAが同じ実験を行い、飛行機の前方より後方座席の乗客の生存確率が高く、シートベルトを締めたまま体をかがめる動作が最も衝撃を少なく受けることを確認した。このような研究が積み重なり、飛行機事故は大幅に減った。2020年にマサチューセッツ工科大学のアーノルド・バーネット博士が、2008年と2017年の間に商業用飛行の安全について調査した論文によると、搭乗客当たりの死者数は10年ごとに2倍ずつ減少した。

これまで消費者は、主にブランドを見て電気自動車を購入した。しかし、これからはバッテリーの安全性を次第に重要に考えるだろう。どんなバッテリーを搭載したかを確認して電気自動車を買う、いわゆる「パワード・バイ(Powered by)」の時代が来ている。そのような時代を先導するためには、圧倒的な超格差の技術力を立証させなければならない。米国が何の理由もなく、飛行機を墜落させたわけではない。