「人を助けなければならないという考えでがむしゃらに走って行った」
全羅南道霊岩郡(チョルラナムド・ヨンアムグン)の成人ゲームセンターの放火事件の現場で、人々を救うために消火器でゲームセンターのドアを壊して、火災の鎮圧を試みた市民の勇気ある行動が話題になっている。主人公のキム・スチョルさん(55)は3日、記者との電話インタビューで当時の緊迫した状況を伝えた。
この事件は1日午後1時半ごろ、霊岩郡三湖邑(サムホウプ)の雑居ビル1階の成人ゲームセンターで起きた。中国国籍の不法滞在者のA氏(63)が火をつけ、客2人が重傷を負い、従業員と客の2人が軽傷を負った。A氏は火災現場で死亡した。
近隣で飲食店を運営するキム氏は、飲食店で仕事をしていたところ、町内の住民から「誰かが成人ゲームセンターのドアを閉めて、中からガソリンを撒いて火をつけた」という話を聞いた。驚いたキムさんは外に飛び出して、20メートルほど離れたゲームセンターに駆けつけた。ゲームセンターには火が燃え広がっていたし、住民たちは地団太を踏みながらも危険なために現場を見守るしかなかった。
キム氏は、「人を助けなければならない」という考えで、周辺に見える木の椅子を手に取り、ゲームセンターのガラスドアを叩き始めた。その頃、警察も到着し、三段棒でガラス戸を一緒に叩いた。しかし、簡単には壊れなかった。
方法を変えなければならないと思ったキム氏は、急いで周辺を見回し、向かい側の水産物市場の前に備え付けられた赤い消火器を発見した。彼は急いで消火器を持ってきて、再びガラスのドアを叩きつけた。やっと門は壊れた。キム氏はついでに、消火器ホースを抜いて火を消し止め始めた。
キム氏が緊迫に動いた2、3分間、中にいた客と従業員など4人は裏口から脱出し、命を救うことができた。この時は消防士たちも到着し、本格的な鎮火作業が行われた。
キム氏はガラスドアを壊す過程でガラスの破片で手が裂けたが、当時は気が気でなく、痛いことも気付かなかったという。彼は、「ガラスを割れば人が出てくると思って、がむしゃらに壊した」と話した。
これを機に、キム氏の過去の善行も知られた。彼は2011年夏、昼に家で休んでいたところ、外から「強盗だ」という叫びと女性の悲鳴を聞いた。彼の家は、光州(クァンジュ)の大学街の路地の近くだった。考えることもなく、下着姿のまま飛び出したキム氏は、ある男が20代の女子大生にわいせつ行為を行った後、逃げるのを目撃した。キム氏は雨の中、裸足で犯人を2キロほど追撃し、逮捕した後、警察に引き渡した。このことで、キム氏は警察から「勇敢な市民褒賞」を受けた。キム氏は、「危険な状況に置かれた隣人たちを見れば、常に助けたい」と話した。
李亨胄 peneye09@donga.com