ウクライナとパレスチナのガザ地区で繰り広げられているいわゆる「2つの戦争」が最近相次いで激化し、2ヵ月後に迫った米大統領選挙の新たな変数として浮上している。バイデン政権のレームダック化が進む中、戦争当事者らが米政権の交代の前に有利な情勢構築のために「賭け」に出て、グローバル情勢の不安が深刻化するとの見通しが出ている。一部では、ロシアや北朝鮮などが米大統領選挙の情勢を揺るがすために武力示威に出る「オクトーバー・サプライズ」が起こる可能性があると懸念している。
特に、外交安全保障の経験不足が弱点とされるハリス副大統領には、2つの戦争の激化が相当な悪材料になる可能性があると指摘されている。一方、トランプ前大統領は、ハリス氏のこうした弱点を狙った攻勢に拍車をかけている。
●「米国の声」が通用しない2つの戦争
バイデン氏は3日、50人以上が死亡したロシアによるウクライナのポルタバへの空爆について、「米国は引き続きウクライナと共にある」とし、「ロシアは戦争に勝てず、ウクライナ国民が勝利するだろう」と声明を出した。
しかし、実質的に米国が現在の戦況に及ぼす影響は大きく減少したという見方が多い。ロシアの核の脅威で緊張が高まったことに加え、ウクライナがロシア本土攻撃に踏み切ると、ロシアもウクライナ東部戦線の攻勢を強化するなど、戦況が悪化する兆しを見せているからだ。ウクライナは、ロシア本土攻撃の後、米国に長距離ミサイルとロシア後方攻撃の承認を繰り返し要請している。
ウクライナのゼレンスキー大統領が3日、米NBCのインタビューで、「ロシアが平和交渉に応じるように、先月から奇襲侵攻したロシア本土の占領を無期限に維持する計画だ」と明らかにしたことも不安要素だ。ゼレンスキー氏は「奇襲攻撃を米国に事前に知らせなかった」とし、「ロシア本土攻撃は戦争を終わらせるための『勝利計画』の核心」と述べ、現在の構図が米国と調整された状況ではなかったことも明らかにした。
中東の戦争も緊迫した情勢が続いている。米国人1人を含め、パレスチナ武装組織ハマスが拘束していた人質6人が命を落とし、休戦をめぐってバイデン政権とイスラエルのネタニヤフ首相の間で軋轢(あつれき)が生じている。ネタニヤフ氏は最近、ガザ地区の「フィラデルフィア回廊」(ガザ地区とエジプトの境界)に軍隊の駐留の必要性を明らかにした。しかし、米国は、「休戦提案にはフィラデルフィア回廊の兵力撤退が含まれている」と述べ、ネタニヤフ氏の主張を一蹴した。
米紙ニューヨーク・タイムズは、「2つの戦争で平和交渉が進展すれば、バイデン氏の任期内の最大の成果としてハリス氏にも肯定的な影響を与えるだろう」とし、「反対の場合、外交安全保障政策の失敗と見なされ、深刻な問題を引き起こす可能性がある」と見通した。
●トランプ氏、テレビ討論を控えてハリス氏の外交経験を集中攻撃
ハリス氏は2日、ホワイトハウスの状況室でバイデン氏らと会議をしている写真をソーシャルメディアに掲載し、「ハマスは犯罪の責任を負わなければならない」としながらも、「休戦と人質解放の合意のための時間はとうに過ぎた」と述べた。ネタニヤフ氏が強硬な立場を曲げなければ、中東戦争がより残酷な局面に突入するという警告を投げかけたのだ。しかし、同紙のコラムニストのトーマス・フリードマン氏は3日、「ネタニヤフ氏は政治的生存のために、ハリス氏の勝利に深刻な害を与えることも厭わないだろう」と分析した。
特に、トランプ氏の陣営は大統領選挙の重大な分水嶺となるテレビ討論会(10日予定)を1週間後に控え、ハリス氏の外交経験不足を集中攻撃している。3日に新たに公開した広告では、ハマスが殺害した人質6人の写真と共に、「彼らは、バイデン氏とハリス氏がイスラエル軍の進入を阻止したラファのトンネルで殺害された」というコットン上院議員(共和党・アーカンソー州)のインタビューを掲載した。
トランプ氏も同日のポッドキャストのインタビューで、「ウクライナ戦争終結に向けた明確な計画を持っている」とし、「(民主党政権が維持されれば)第3次世界大戦が勃発する可能性がある」と主張した。トランプ氏は、中国との戦争をどのように回避するのかという質問にも、「確かなアイデアがある」とし、「(中国と戦争すれば)私たちは多くの困難を経験し、彼らも困難に陥るだろう」と述べた。
ワシントン=ムン・ビョンギ特派員 weappon@donga.com