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「老老葛藤」の死角にある田舎の敬老堂

Posted October. 08, 2024 09:14,   

Updated October. 08, 2024 09:14

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2年前の秋、スウェーデンの年金改革の取材に行った時のことだ。スウェーデンの年金受給者に会うため、首都ストックホルムから南西50キロほど離れたグネスタの老人会館「パワーフセット」を訪れた。敬老堂に行くのは約30年ぶりだった。幼い頃、両親が共働きだったため、小学校を終えるといつも敬老堂にいる祖母のところに行き、夕方まで過ごした。1点10ウォンの花札をして時間を過ごす老人たちを多く見た。隣で一日中、祖母が花札をするのを見るのは、幼心にうんざりしたこともあった。

高齢者福祉大国と言われるスウェーデンの敬老堂はどう違うのか気になった。白髪のおばあさんたちが集まっているのは同じだったが、手に持っているのは花札ではなく編み針だった。施設も大きく、洗練されていた。敬老堂周辺1キロの散歩プログラムを運営し、毎週金曜日にはデジタルに疎遠な高齢者たちにモバイルとコンピュータの教育を行うという。

何よりも驚いたのは、敬老堂の運営主体だった。パワーフセットは、スウェーデン最大の高齢者組織であるスウェーデン全国年金生活者協会(PRO)とスウェーデン年金生活者連合(SPF)が共同で運営していた。PROは社会民主党系の非営利組織であり、SPFは社会民主党を除いた連合組織だ。

年金受給者団体は敬老堂だけを運営しているわけではない。PROは1986年に旅行会社「グランドツアー」を設立し、会員の年齢に合わせた旅行プログラムを提供し、成人の生涯教育施設である公民学校(folkhgskola)も運営している。さらに宝くじ事業も行っている。

スウェーデンにはこのような役割を担う年金受給者団体が5つもある。パワーフセットで会ったPROグネスタ支部代表のマーガレッタ・ベリダルさん(72)は、「年金受給者団体の政治性向は異なるが、私たちの目的は老後の孤独と戦うこと」とし、「高齢者の活動と出会いをつくり、対立は仲裁し、より良いサービスを提供するために競っている」と説明した。

ふとスウェーデンの敬老堂で取材したことが思い出されたのは、今年7月15日、慶尚北道奉化(キョンサンプクト・ボンファ)の敬老堂で発生した「農薬コーヒー」事件のためだろう。事件の捜査過程で死亡した80代女性Aさんを容疑者として特定した警察は先月30日、被疑者死亡で事件を終結させた。警察は、具体的な犯行動機を断定することはできないとしながらも、「敬老堂で主に花札をし、Aさんと他の会員間の対立と不和があったことを確認した」と説明した。

来年には65歳以上が全人口の2割を超え、超高齢社会に突入するというが、韓国の敬老堂文化は数十年前から花札遊びから抜け出せずにいるのが現実だ。高齢者間の対立が大きくなり、孤独と貧困、病気に苦しむ高齢者が増え、些細な対立が殺人にまで発展するケースも少なくない。2015年7月の慶尚北道尚州市(サンジュシ)の「農薬サイダー」、16年の青松郡(チョンソングン)の「農薬焼酎」、18年4月の浦項市(ポハンシ)の「農薬サバ汁」事件も然りだ。

全国の敬老堂約6万8千の運営を事実上独占している大韓老人会が、超高齢社会の高齢者の多様な利害関係と対立に適切に対応しているのか疑問だ。政府も、高齢者コミュニティサービスを根本的に改善できるシステムは何か切実に考えなければならない。