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米国の書店で「菜食主義者」が売り切れになった理由

米国の書店で「菜食主義者」が売り切れになった理由

Posted October. 14, 2024 09:14,   

Updated October. 14, 2024 09:14

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「一日中、多くの人が尋ねてきますが、『菜食主義者』はありません。昨日売り切れました。本当にすみません」

11日(現地時間)、米ニューヨーク・マンハッタンの人気書店「ストランド」で働くマーゴさんは、残念そうな表情でこう言った。実は本は数年前にすでに読んでいた。「大丈夫です」と言って、満足して店を後にした。

これまで、地球の裏側で知らない作家がノーベル文学賞を受賞したとき、その日のうちに書店に行って本を買ったことがあっただろうか。だが、ここの人たちはそうだった。受賞当日、『菜食主義者』はアマゾン文学分野のベストセラー1位になった。アマゾンのアプリを開くたびに順位が上がっていき、受賞発表後の半日でそうなった。

米国人は本当に本が好きだ。どこへ行っても本を読んでいる人を簡単に見ることができる。公園で、カフェで、地下鉄で…彼らはあちこちで本やKindle(アマゾンの電子書籍専用端末)を持っている。米国内では、本を読む人が以前より減ったと懸念の声が上がっているが、皆が携帯電話ばかり見ている国から来た者としては、何が心配なのか不思議でならない。

ここの人々はなぜそんなに本を読むのだろうか。まず地下鉄を思い浮かべてみる。そうだ。120年の歴史を誇るニューヨークの地下鉄では、インターネットが全く繋がらない。驚くべきことだが事実だ。駅に立っているときは少しだけ繋がるが、出発するとまた繋がらない。だから、本がないとかなり退屈だ。

このような1次元的な理由が全てではない。昨年、ワシントンDCで研修をしたとき、そこの地下鉄はインターネットがよく繋がるにもかかわらず、本を持った人がいつもいた。休暇先でもそうだった。海辺でも、森の中でも、人々は本を読んでいた。この人たちはいつからこうなのか。

思い当たる節があった。米国のどこへ行っても近所にあった図書館、そこで2、3歳から座って本を読んでいた子どもたちの姿だった。子どもたちはそこで本を読んだり、歌を歌ったり、レゴをしたりしていた。週末になると、ボランティアが子どもたちに2、3時間本を読んであげた。物理的にも精神的にも、図書館は最も温かく、親切で美しい空間だった。米国の図書館は、各年齢層に合わせたアクティビティやブッククラブなど様々なプログラムを用意している。近所の図書館では、一度に最大50冊を3週間貸出し、予約者がいない本はさらに3週間貸してくれた。小学校でも、すべての子どもが必ずしなければならない唯一の宿題は「1日20分本を読むこと」だった。読書日記にどんな本を何分読んだかを毎日書き、親のサインと共に提出すると、先生が簡単な称賛の言葉を書いて返してくれた。最初は20分を目標に始めたが、後に20分しか読まずに終わることはなかった。そうやって長い間、しっかりと本と接して育った人がこの社会にいるのだ。

書店を出て、昔読んだ小説家イ・ミンジン氏の『億万長者のただ食らい』の英語版を買った。アマゾンで買うと10.32ドル、書店で買うと21.99ドルだったが、書店で買った。ほとんどの本をビニールで包装して開けることができない韓国の大型書店とは違って、すべての本を自由に見ることができるここの書店への感謝であり、最低限の礼儀だった。アマゾンの価格を知らないはずはないのだが、レジの前には今日も要領の悪い米国人が長蛇の列を作っていた。私たちはノーベル賞を愛し、彼らは本を愛した。