Go to contents

偏見と自分らしさ

Posted October. 16, 2024 07:41,   

Updated October. 16, 2024 07:41

한국어

世間が何と言おうと、思い通りに行動する自由な魂の持ち主であるジェヒ(キム・ゴウン)と、性的マイノリティであるという秘密を隠して世間と距離を置いて生きているフンス(ノ・サンヒョン)。イ・オンヒ監督の「大都会の愛し方」は、登場する男女のキャラクターだけでも、彼らの関係がどのように紡がれていくのか気になる。ある日、偶然フンスの秘密をジェヒが知ることから2人の関係が始まる。フンスが「弱みでもつかんだと思っているのか」と自己防衛本能に近い怒りをあらわにすると、ジェヒはフンスにこう言う。「自分が自分であることがなぜ弱点なの」。

決して平凡ではないこの若者たちは、世の中の偏見から解放されるためにある方法を見つけ出す。それは、2人が付き合っているふりをすること。これでフンスは性的マイノリティではないかという周囲の視線から解放され、ジェヒもまた、あちこちの男と付き合っているという噂から解放される。彼らは同棲するが、それぞれ誰かと出会い、愛し、傷つく。男女間の愛とは言えないが、ある種の同志愛のようなものが、少なくとも2人の間には芽生えている。彼らも社会人になり、就職や結婚など、世間が求める枠の中に入り、普通になっていくが、そのたびに2人は互いに言う。本当の自分になって生きろと。

ブッカー賞とダブリン文学賞にノミネートされたパク・サンヨン作家の同名小説集に掲載された「ジェヒ」が原作のこの作品は、見ての通りクィア映画だ。しかし、それでも誰もが共感できるのは、世の中が求める無数の「らしさ」が与える傷が、性的マイノリティだけのものではないからだ。現実に追われ、自分らしさを忘れて生きている人たちに、一瞬でも自分らしい青春のひとときを思い出させてくれるだけでも、大きな慰めになる作品だ。