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大統領が破局を望まないのであれば

Posted October. 26, 2024 08:23,   

Updated October. 26, 2024 08:23

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約6350個。今年5月から北朝鮮が韓国に飛ばした風船の数だ。北朝鮮がビラをぶらさげた風船を本格的に韓国に飛ばした2016年と17年の数は、それぞれ約1千個だ。5ヵ月でその数の6倍以上だ。

呉世勲(オ・セフン)ソウル市長は最近、ゴミ風船にもっと積極的に対応すべきだと韓国軍に要請したという。風船が破裂するように発熱タイマーと火薬を取り付けているため、火災の発生が繰り返されることが呉氏の懸念を募らせた。北漢山や南山に落ちて山火事が起きたらどうするのか。人的被害が発生するような大惨事が起きる可能性もある。

打つ手がなく、「落ちた風船を早く回収するのが最善」という軍の態度は無策と言わざるを得ない。多くの市民の日常が危険にさらされたまま時間が過ぎていく。大火事でも起きて人が死んでから「断固たる軍事的措置を取る」のでは、破局を望んでいるように聞こえる。

北朝鮮は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏を非難するビラ風船も飛ばした。風船は、尹氏が外国の首脳を迎える国賓歓迎式の会場に落ちた。全地球測位システム(GPS)が大統領室を狙ったのだろう。ゴミ風船が来るたびに、軍は「安全に有害な物質はなかった」と言った。しかし、今や市民の生命を脅かす物質でターゲットを狙わないという保証はない。

ダチョウ効果(オ-ストリッチ効果)だ。ダチョウは猛獣に遭遇すると砂に頭を埋める。危機が迫っているにもかかわらず、問題を解決しようとせず、放置し、背を向ける。

「金建希リスク」に対する尹氏の対応も似ている。11月10日の任期折り返し点を控え、尹氏の国政運営支持率が心理的マジノ線である20%である理由が何なのか、否定的な評価の理由として「金建希問題」が1位である理由が何なのか、民心に少し敏感であればすぐに分かるはずだ。しかし、1年近くもそのリスクを完全に解消しようとする姿は見られない。

ある与党関係者は「大統領の危機は外部からの爆発(explosion)ではなく、内破(implosion)から来ている。そのため、より深刻だ」と話した。同関係者によると、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の国政支持率を急落させたBSE(牛海綿状脳症)問題は、原因が外部衝撃から来た「explosion」に近い。しかし、尹氏の支持率低迷は、「金建希リスク」を尹氏自身が長い間放置した内部矛盾が作った「implosion」だ。ダチョウが砂に頭を埋めるようなものだ。

「ミョン・テギュン・リスク」も同様だ。金氏がミョン氏とどのような話をしたのか、その中で何が問題になるのか、大統領室の参謀も正確に知らないようだ。どのような話を交わしたのか調査してみようと尹氏に話す参謀もいないようだ。尹氏が、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表との面談で「私と違ってミョン氏をなだめ、選挙がうまく行くようにした」と話したというが、金氏がなぜミョン氏をなだめようとしたのか説明はない。韓氏の「金建希ライン」の人的刷新の要求に対して、尹氏は「どんな悪いことをしたのか」という態度だ。

尹氏をよく知る人物は、「最後まで叩かれてから方向を変えるスタイル」と話した。人的刷新は、具体的な非がある時だけでなく、民心が要求する時、変化が必要な時に行うものだ。タイミングが重要だ。金氏に対する世論がどれほど深刻かを認識するのであれば、そのために国政運営の動力が失われると考えるなら、今決断しなければならない。破局を望まないなら。