Go to contents

北朝鮮人権問題まで金夫人と絡ませてはいけない

北朝鮮人権問題まで金夫人と絡ませてはいけない

Posted October. 29, 2024 09:04,   

Updated October. 29, 2024 09:04

한국어

ロシアに拘束されていた米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの記者が8月に釈放され、再び米国の地を踏む場面は、うらやましい限りだった。取材途中、スパイ容疑で逮捕されたエバン・ゲルシコビッチ記者が拘束されてから約500日後のことだった。拷問と過酷な環境で悪名高いレフォルトボ刑務所は、似たような理由で逮捕された韓国人宣教師のペク氏が収監されている所でもある。

米国は、ペク氏をはじめロシアに抑留されている自国民を救うために、1年以上にわたって緻密な水面下の外交交渉を繰り広げた。ロシアを相手に使う「交換カード」を確保するために第3国である欧州の同盟国まで引き込んだ。特にドイツには、プーチン大統領が送還を希望するロシアの暗殺者が拘束されていた。自国の地で殺人を犯した犯罪者を釈放することはできない」とし、頑強に粘るドイツを米国は執拗に説得した。そうして劇的に戻ってきた米国人4人をバイデン大統領が真夜中に空港に直接出て迎えた。

明るく笑う釈放者たちを見て、北朝鮮に閉じ込められているキリスト教宣教師のキム・ジョンウク氏のことが思い浮かんだ。2013年に平壌(ピョンヤン)で逮捕されてから、すでに4000日が過ぎた。無期労働教化刑を言い渡された後、生死さえも確認できていない。北朝鮮が韓国人を乱暴に扱うことはできないだろうと、楽観的に考えるしかない。キム氏を含めて北朝鮮に抑留されている韓国人は6人だ。

北朝鮮人権問題は、政治犯収容所に連れていかれて拷問を受けたり処刑されたり、飢えている北朝鮮住民だけではない。北朝鮮人権情報センター(NKDB)などでは「北朝鮮人権」を北朝鮮が加害者であるか、北朝鮮に関与した人権関連事件のすべてを含む広い概念と定義している。抑留者や拉致被害者、国軍捕虜を含む大韓民国の国民も絡み合っている問題だということだ。しかし、北朝鮮の人権を重視するという尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府下でも、実質的な改善は実現できずにいるのが現実だ。

大統領室が最近、北朝鮮人権財団理事の推薦を特別監察官候補の推薦と結びつけたことも、さほど真剣に受け止めた措置とは思えない。相関関係のない二つの事案は、与野党が政治的に結びつけたことで、すでに8年間空転している状況だ。そのうえ、野党でもない与党代表が連携を解除しようと動き出した。龍山(ヨンサン)がこれを北朝鮮人権財団理事問題として受け入れたのは、こうしてでも財団を運営するという切迫感というよりは、金建希(キム・ゴンヒ)夫人関連疑惑を扱う特別監察官の選任を難しくしようとする思惑が先行したためではないか。

外交部傘下の北朝鮮人権国際協力大使の選任過程でも混乱があった。「金正恩(キム・ジョンウン)の金庫番」と呼ばれる北朝鮮労働党39号室の高官だったイ・ジョンホ氏の娘のイ・ソヒョン氏が推薦されたという報道を受けて、脱北者団体が反発している。北朝鮮政権で既得権益を享受して韓国に亡命したが、その後米国に亡命を申請して去った人の子どもが北朝鮮人権大使を務めるのは容認できないということだ。イ・ソヒョン氏が金建希氏の訪米中にスケジュール進行を手づだったことも議論を拡大させている雰囲気だ。数十年間活動してきた北朝鮮人権専門家たちを排除し、30代初めの脱北者が有力候補として検討されるというから、「金女史ライン」が背景になったのではないかという疑惑が提起されてもおかしくない。

このような議論は、結果的に北朝鮮人権問題を政争の泥沼に引きずり込むだけだ。このようなやり方では解決どころか、国内の葛藤を煽り、これまでの努力も後戻りさせることになるだろう。その間、北朝鮮では10代の生徒たちが韓国ドラマを視聴したとして公開処罰されたという証言が出て、北朝鮮側の空に浮かべる対北朝鮮ビラが多くなるだけに、これに接する住民たちが統制、迫害を受ける情況も続いている。ただでさえ、複雑な政治問題と結びつけて時間を無駄にしている時ではない。