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児童生徒のリテラシー低下の中、AI教科書の導入は適切か

児童生徒のリテラシー低下の中、AI教科書の導入は適切か

Posted October. 30, 2024 08:38,   

Updated October. 30, 2024 08:38

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「子どもたちが、なぜデジタル教科書の実験対象にならなければならないのか分からない。ただでさえ、デジタル過没入世代なのに、教科書までをタブレットパソコンで見るなんて…」

来年に予定されている人工知能(AI)デジタル教科書の導入を控え、保護者の間で議論が激しくなっている。保護者の多くは、ただでさえ子供たちの「スマートフォン中毒」が深刻な状況で、教科書までがデジタル機器に変わることを快く思わない。AI教科書が、児童生徒たちの集中力と識字力を低下させ、学習効果を落とすという懸念がある。まだ世界的に教科書にAIデジタル教科書を全面的に導入した国がないことも、保護者の不安を増大させる要素となっている。

国会には、AIデジタル教科書の導入を見合わせてほしいという国民同意請願まで登場し、1ヵ月で5万6505人の同意を得て教育委員会に引き渡された。

教育現場でも反発が強い。全国市道教育監17人中9人が、AIデジタル教科書の導入に「慎重意見」を明らかにした。全国市道教育監協議会も最近、教育部に対し財政負担と個人情報侵害などの理由を挙げて、「AIデジタル教科書の改善および補完事項を点検後、段階的に導入するなど速度の調節が必要だ」という意見を送った。

AIデジタル教科書は、李周浩(イ・ジュホ)副首相兼教育部長官の力点事業だ。来年3月から小学校3~4年生、中学校1年生、高校1年生を対象に、数学・英語・情報・国語科目にAIデジタル教科書が優先的に適用される。学校では、来年にAIデジタル教科書に接する世代を「李海瓚(イ・ヘチャン)第1世代」になぞらえて、「李周浩1世代」とも呼ぶ。当初教育部は、2026年から国語・科学・社会・歴史など他の主要教科に対しても、AIデジタル教科書を導入する計画だったが、世論の激しい圧迫に、最近、2026年の導入科目については「速度調節をするだろう」という立場を明らかにした。

考えてみれば、教育部は、激しい反対世論が一方ではありがたいのではないかという気もする。教育現場には、超高速インターネット網など基本設備も整っていない。来年3月に導入されるAI教科書の英語・数学・情報出版社は、検認を通じて来月末に決定され、テスト期間はたった3ヶ月に過ぎない。これは拙速導入という批判が提起される地点でもある。

教育先進国と呼ばれるスウェーデンは、2017年にデジタル教科書を導入したが昨年廃止した。過度にデジタル化された学習方法のため、学習能力と識字力が低下したという批判によるものだ。実際、小学校4年生の読解能力を評価する「国際読解リテラシー研究(PIRLS)」によると、スウェーデンの児童生徒たちの平均点数は、2016年555点から2021年544点へ11点下がった。

韓国の教育現実はどうだろうか。最近、韓国教員団体総連合会が、教師5848人を調査した結果によると、「児童生徒の識字力が過去に比べて低下した」という回答が91.8%に達した。教師が「事件の始発点」を言うと、「教師が、なぜ悪口を言うのか」という反応が戻り、「族譜とは何か」という質問には「豚足ポッサムセット」という答えが返ってきたという。これを見れば、韓国もやはりAIデジタル教科書の導入過程で、識字力低下の懸念に対する補完が必要な状況だ。

教科書は、公教育の根幹である。政府は今からでも拙速議論を考慮し、十分な検討と補完を経てAIデジタル教科書を導入するという方針を明らかにしなければならない。急いで推進して失敗した教育政策は、児童生徒たちの未来を長い間足を引っ張るためだ。