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「富裕層減税」議論を招いた政府、意味のない「名ばかり健全財政」

「富裕層減税」議論を招いた政府、意味のない「名ばかり健全財政」

Posted November. 06, 2024 10:20,   

Updated November. 06, 2024 10:20

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国会審議を控えている今年の税法改正案が初めて発表された時から疑問に思ったのは、税負担の変化だ。「富裕層の税金」とされる相続税の負担を軽減する内容が盛り込まれているにもかかわらず、政府は高所得者より庶民、中間層の税負担がより大きく減ると言っているためだ。政府は高所得者の税負担は1664億ウォン減るが、庶民、中間層は6282億ウォン減ると推定した。崔相穆(チェ・サンモク)副首相兼企画財政部長官も、「富裕層に対して減税するためではなく、中間層の負担を緩和するため」と強調した。

ところが、最近、正反対の推計が出た。国会予算政策処は、今年の税法改正による高所得者の税負担の減少幅が4兆ウォンを超え、庶民、中間層の13.5倍に達すると推定した。今年を基準に今後5年間の税収効果を算出すると、高所得者の税負担は20兆ウォン以上減った。庶民、中間層の税負担の減少幅は約1兆7千億ウォンにすぎなかった。

このような相反する推計は、相続・贈与税の改正がもたらす税収効果を分類する方法に起因した。政府は相続人が受ける減税の恩恵を分析が難しい項目を集めた「その他」として除外して計算した。一方、国会予算政策処はその効果が高所得者に還元されると見ていた。これをめぐって一部では、政府が「富裕層減税」フレームを緩和するために相続・贈与税の改正効果を除いたのではないかという疑惑が提起された。庶民、中間層の税負担の減少幅がより大きくなるよう見せかけたということだ。

来年から大きく変わる相続・贈与税を見てみると、所得と財産が多い人に大きな減税の恩恵が与えられると見るのが合理的だ。政府が国会に提出した改正案がそのまま国会を通過すれば、相続・贈与税の最高税率は50%から40%に下がる。また、最高税率が適用される課税標準(相続額から各種控除額を除いた金額)も「30億ウォン超過」から「10億ウォン超過」に縮小される。相続税を課税する際、子ども1人当たり控除する金額も5千万ウォンから5億ウォンに拡大される。17億ウォンを配偶者と子ども2人が相続する場合、全く相続税を払わなくて済むようになる。

富裕層減税の撤回を主張している野党が、相続人に還元される減税の恩恵を除いて計算した理由を尋ねれば、政府はどのように答えるだろうか。税法改正案を発表した際、政府は条件によって中間層も相続・贈与税の負担が減る可能性があり、一律に高所得者に入れるのは難しかったと説明した。同じ答えなら、減税の恩恵を受ける中間層が少なくとも半分に近いという分析でも持ってこなければならない。不必要な論議を生んだ不合理な計算法の根拠をもっと具体的に提示しなければならない。

2年連続の歴代級の税収パンクが続き、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の財政政策の大原則である「健全財政」と減税はますます両立が難しくなっている。税金が少なくなっている状況で健全財政を守るには、さらに税金を減らすのはやめるか、支出を減らさなければならない。それなのに、政府は「中間層減税」と言って納得しがたい数字を出して減税基調を支持している。支出を減らすこともできず、今年も住宅請約通帳の貯蓄額などで作られた基金から引き出す「自転車操業」に踏み切る。あれやこれやと姑息な手段で埋め合わせる健全財政は持続可能ではなく、国家経済にしわ寄せを与えるだけだ。