バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が16日(現地時間)、昨年11月の米サンフランシスコ首脳会談から1年ぶりに、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれたペルー・リマで再会した。来年1月に退任するバイデン氏と習氏の最後の会談で、2人は北朝鮮軍のロシア派遣などをめぐって神経戦を繰り広げた。特に習氏は、「中国の戦略的安全と核心的利益が脅かされるのを座視することはない」と述べ、まもなく発足するトランプ政権に向けて警告メッセージを送った。
●北朝鮮のロシア派兵をめぐって神経戦
米ホワイトハウスによると、バイデン氏は習氏との首脳会談で、「中国は北朝鮮とロシアに対して影響力を持っており、紛争の激化や北朝鮮の追加派兵を防ぐために行使すべきだ」と述べた。また、バイデン氏は、北朝鮮の派兵で「血盟」関係に格上げされたロ朝軍事協力は深刻な危険状態に至ったと指摘した。その上で、「これは直接的な韓国への挑発やミサイル発射、7回目の核実験の可能性を高める」と強調した。
これに対して習氏は、「中国は韓半島で戦争や混乱が起きることを許さない」とし、「中国の戦略的安全と核心的利益が脅かされるのを座視することはない」と述べた。
これは韓中首脳会談で習氏が、「中国は域内情勢の緩和を望み、韓半島の緊張を望まない」とし、「当事者が政治的解決を模索するために対話と交渉を通じて問題を平和的に解決していくことを望む」と明らかにしたよりも強いメッセージだ。昨年の米中首脳会談でも、北朝鮮とロシアの安全保障協力への影響力行使の要請に対し、習氏は政治的解決が必要だという原則的な立場を堅持した。
このような習氏の発言は、北朝鮮のロシア派兵と高強度の挑発で緊張が高まることに反対する考えを明らかにするとともに、韓国と米国に対応の自制を促したとみられている。また、北朝鮮に対する警告メッセージも伝えたという評価もある。さらに、新政権の国務長官にマルコ・ルビオ上院議員、大統領補佐官(国家安全保障担当)にマイケル・ウォルツ下院議員を指名するなど、第2次トランプ政権の外交・安全保障ラインに対中強硬派が起用される状況への懸念を示したともみられる。特にウォルツ氏は、中国に圧力をかけるために韓半島の戦術核再配備が必要だと主張している。
●習氏、保護貿易と台湾問題に対する立場を強調
習氏は、保護貿易や台湾問題に対する立場も明らかにした。習氏は、「新冷戦では勝利することはできず、中国を封鎖することは望ましくなく、成功することもできない」と述べた。中国からの輸入品に対する60%の関税賦課を公言したトランプ次期大統領に対し、米中両国は対立ではなく協力しなければ互いに利益にならないという点をトランプ氏の祝辞に続き改めて強調したのだ。
中国は、台湾、政治体制、人権、発展の権利など、米中関係の4つのレッドラインを再確認した。習氏は特に台湾問題と関連して、「米国が、台湾の頼清徳総統と民進党政権の『独立』に明確に反対することが台湾海峡の平和を守ることだ」と強調した。トランプ氏と経済・安全保障関連の交渉を行う前に、マジノ線を明らかにしておく狙いがあるとみられる。
バイデン氏と習氏は、人工知能(AI)に核兵器使用の判断を委ねないことを確認した。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「これはAIと核ドクトリンの交差点に対する重要な声明であり、米中が競争の中でも核心領域にはリスク管理のために責任を持って取り組んでいることを示す」と説明した。今回の声明は、昨年11月の首脳会談での「米中AI協議体」設立決定後、初の合意だ。
金喆仲 tnf@donga.com