「韓国女子選手として初のグランドスラムを達成したい」
今年高校2年生の柔道選手がこのように話した。堂々と見えるが、やや欲張りすぎる目標設定にみえるかもしれない。だが、イ・ヒョンジ(17)のことなら事情が違う。イ・ヒョンジは今年4月、アジア選手権で優勝し、グランドスラム完成に必要なパズル4ピースのうち1つをすでに手にしている。グランドスラムはオリンピックと世界選手権、アジア大会、アジア選手権大会を全て制することを指す。
韓国女子柔道に「スーパー有望株」が登場した。済州道(チェジュド)の南寧(ナムニョン)高校2年に在学中のイ・ヒョンジが、その主人公だ。最重量級(78キロ超)のイ・ヒョンジは、ジュニア舞台ではすでに「無敵」だ。今年9月のアジア・ジュニアユース選手権と10月の世界ジュニア選手権で優勝を飾った。シニア舞台でも実業チームの先輩たちを相次いで破り、柔道界を驚かせた。イ・ヒョンジは今月初めに開かれた2025年度代表1次選考会でオム・ダヒョン(29・高敞郡庁)、シン・ジヨン(25・順天市庁)、キム・スミン(25・慶南道庁)を順に破って優勝した。3試合でいずれも一本勝ちを収めた。今年3月のグランドスラム・トビリシでは2021年東京五輪金メダリストの素根輝(24・日本)を制する波乱を巻き起こして3位に入った。イ・ヒョンジは「私の主な特技は払い腰と支釣込足だ。組み手も速い方だ」とし、「私の技術はまだ露出されていないので通じているようだ。太極マークが恥ずかしくない選手になるためには、初心を忘れずにもっと頑張らなければならない」と謙遜した。
イ・ヒョンジは小学校2年生の時、柔道を始めた。父親のイ・チフンさん(48)は、「自分の体は自分で守ることができなければならない」とし、子どもの時から娘に水泳や合気道、重量挙げなど様々な運動を習わせた。シルム選手だった父親の遺伝子を受け継いだイ・ヒョンジは、幼い時から体格が格別だった。小学校2年生の時の身長が157センチで体重は60キロだった。小学校5、6年生の時、全国少年体育大会を連覇して頭角を現した。中学3年生だった2022年アジアジュニア・ユース選手権で優勝し、高校1年生だった昨年には韓国柔道史上最年少で代表選手に選ばれた。
イ・ヒョンジの最大の武器は圧倒的なパワーだ。身長181センチ、体重133キロと最重量級の中でも大柄のイ・ヒョンジは、欧州選手との対決でも力の優位を武器に試合をリードしていく。ウエイトトレーニングもスクワットの最大重量が180キロでデッドリフト230キロ、ベンチプレス100キロ(1回基準)と計510キロに上る。女子選手では珍しい数値だ。イ・ヒョンジは練習の時も男子の重量級選手たちと主に対決する。南寧高コーチのヒョン・フイクさん(40)は、「ヒョンイジは筋力と技術がとても優れている。まだ実戦経験が多くはないが、自信を持たせるために『今までやってきた通りに練習すれば良い』という話をよくしてあげている」と話した。
イ・ヒョンジは今年、パリ五輪に出場した代表選手たちのトレーニングパートナーとしてフランスに行ってきた。イ・ヒョンジは「五輪出場選手だけでなく、代表チームの練習を助けるためにパリに来た他のチームの選手たちとも対決したのが大きく役立った」と話した。イ・ヒョンジが生まれた済州道には柔道部がある高校が南寧高校しかなく、練習相手を見つけるのは容易ではない。イ・ヒョンジは「パリ五輪期間中に代表選手のホ・ミミさんやキム・ハユンさんを近くで見ながらたくさん学んだ」と話した。
パリ五輪最重量級で銅メダルを獲得したキム・ハユンは、イ・ヒョンジが越えなければならない山だ。イ・ヒョンジはこれまでキム・ハユンと2度対戦し、1勝1敗を記録している。キム・ハユンは五輪メダリストの資格で今月初め、代表1次選考会をパスした。来年3月に開かれる第2次選考会に出場する。イ・ヒョンジは「ハユンさんは最重量級では珍しいほど優れた足技を持っている。まだお姉さんから学ぶことが多い。良いライバルとして勝負するために努力する」と意気込みを語った。
姜泓求 windup@donga.com