Go to contents

目の前に広がる生き生きとした漁村の人文学

目の前に広がる生き生きとした漁村の人文学

Posted November. 23, 2024 09:06,   

Updated November. 23, 2024 09:06

한국어

1960年代まで、延坪島(ヨンピョンド)にはイシモチが群れ集まった。毎年4、5月になると延坪島の海にはイシモチが溢れ、巨大なイシモチの群れの「クウック、クウック」という鳴き声で眠れないほどだった。小さな島に大漁を夢見て船員数万人が集まった。イシモチを売ったお金が島に溢れ、商店や酒場は活況を呈した。ソウルの明洞(ミョンドン)が羨ましくなかったという思い出話まである。「延坪島漁業組合の1日の出納額が韓国銀行の出納額より多かった」「延坪島漁業組合の専務が黄海道(ファンヘド)知事よりいい」と言うほど「黄金時代」だった。

しかし、イシモチの漁獲量が減り、好況の光は消えた。ワタリガニ漁がイシモチに取って代わったが、かつてのような活力は見当たらない。南北関係が悪化し、延坪島は分断の緊張感を肌で感じる場所となった。延坪島に観察調査に出かける著者は、その変化をこう語る。「延坪島は一つの軍事要塞だ。住民の半分は軍人とその家族だ」。

国立民俗博物館の学芸研究士が、海に住む魚とその海を生活の場とする人々の話をまとめた「魚の人文学」であり「漁村の人文学」の著書。東海、西海、南海、済州を問わず、韓国全域の海に足を運んで調査した内容と地域住民のインタビューが生き生きと記されている。獲れる魚種の変化によって漁村の姿もいつの間にか変化していく。三方を海に囲まれた韓国は、魚種が多様で、それに伴って漁村の人々の喜怒哀楽も多彩で豊かであることを改めて感じさせられる。


サ・ジウォン記者 4g1@donga.com