北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、「すでに米国と交渉の行けるところまで行った」とし、「結果として確信したのは、超大国(米国)の共存意志ではなく、徹底した力の立場と侵略的かつ敵対的な対朝鮮政策だった」と主張した。第1次トランプ政権で、2回にわたる米朝首脳会談に臨むなど交渉を行ったものの、事実上、物別れに終わった経験などを踏まえ、第2次トランプ政権を念頭に核武力を背景にした「強対強」の対決を予告したのだ。ただ、正恩氏がトランプ氏の再選後、初めて「交渉」、「共存意志」などの表現を使ったこと自体が、トランプ氏との「ビッグディール」の意向を示したという見方もある。政府消息筋は、「核兵器の高度化で自信を深めた正恩氏が、トランプ氏が環境さえ整えてくれれば、非核化ではなく核軍縮などを前提に再会する可能性を示唆したのではないか」と話した。
正恩氏が21日、平壌(ピョンヤン)で開かれた最新兵器の展示会「国防発展2024」の開幕式の記念演説でこのように明らかにしたと、朝鮮中央通信が22日付けで報じた。展示会には、新型戦車、自爆型ドローンなど各種放射砲(多連装ロケット)と中・短距離弾道ミサイルなど最新兵器が総動員された。特に、舞台の両サイドには、米本土を攻撃できる火星(ファソン)18と先月末に初めて発射実験した火星19など、固体燃料の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も展示された。韓国軍関係者は、「ロシアへの追加的な兵器輸出を念頭に置いた『ショーケース』であり、来年1月に発足するトランプ政権に向けて核ミサイルの高度化を誇示し、今後の交渉を有利にしようという狙いがある」と話した。
正恩氏は、「米国は絶対に敵対的ではないという巧妙な言葉が、世の中の人々に奇妙な言葉に聞こえるようになって久しい」と述べるなど、米国を集中的に取り上げた。逆に韓国については全く言及しなかった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府を「パッシング(素通り)」し、米国とだけテーブルに座る「通米封南」の考えを示したと見られる。政府消息筋も、「韓半島の緊張状況を最大限まで引き上げた後、トランプ政府と米朝直接交渉を試みるという意味と読める」と話した。トランプ氏も大統領候補だった時、「私は正恩氏とうまくやっていた」、「核を持つ北朝鮮とうまくやるのは良いこと」など、正恩氏との再会可能性に何度も触れている。
このような中、政府当局者は東亜(トンア)日報の電話取材に対して、「ロシアが北朝鮮の通常兵器の近代化にすでに支援したことが把握された」と明らかにした。ロシアに大規模派兵まで行い、血盟関係に格上げした北朝鮮のために、新型戦車の改良・旧型戦闘機の性能改善やミサイル技術支援などを行った可能性があるということだ。
申晋宇 niceshin@donga.com