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北朝鮮、米代表の腕をつかんだ時の切迫感が残っているなら...

北朝鮮、米代表の腕をつかんだ時の切迫感が残っているなら...

Posted November. 26, 2024 08:30,   

Updated November. 26, 2024 08:30

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2019年の米朝ハノイ会談の8ヵ月後にスウェーデンで開かれた後続交渉。北朝鮮の金明吉(キム・ミョンギル)首席代表が、米国のスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表と目も合わせず、準備してきた長文の原稿を読み上げた。金氏が「すべての責任は米国にある」として一方的に交渉決裂を宣言すると、針が落ちる音が聞こえるほど張りつめた沈黙が流れた。そうして北朝鮮側代表団が席を立って去る中、最後の瞬間まで迷っていた一人がビーガン氏の腕をつかんで急いで一言ささやいた。「どうか、あきらめないでください(Please, don't give up)」。

不意のこの短い一言に、米国の交渉チームは非常に深い感銘を受けたようだ。表に出ている北朝鮮側の強硬さとは異なる気流や変数があるのかなど、様々な分析が行われたという。強硬派である北朝鮮の統一戦線部と比較的穏健派の外務省の間で軋轢があると言われていた時だ。交渉に参加した米側関係者が伝えた当時の様子は、時折「北朝鮮内にも非核化を望む人たちが密かに煩悶しているのではないか...」という想像を抱かせた。

第2次トランプ政権の国家安全保障担当副補佐官に任命されたアレックス・ウォン氏は、当時この場にいた交渉チームの一人だった。第1次政権の時に国務省の北朝鮮担当特別副代表として、ビーガン氏と共に最も執拗に北朝鮮を研究し、交渉戦略を悩んだ人物だ。ウォン氏は、バイデン政権になって、準備した戦略を最後まで進められなかったことを悔やんでいた。バイデン政権が発足した後、自身が主導したトランプ政権の対北朝鮮政策のレビューに取り組んだ時には「愚かなアプローチ」と首をかしげたこともあった。公職を離れた後も北朝鮮への関心を持ち続けたウォン氏にとって、ハノイ会談は「未完の交渉」として残っているように見えた。

そんなウォン氏が米国家安全保障会議(NSC)のナンバー2に任命されたことで、米朝交渉が再開される可能性が高まるという期待混じりの観測が流れている。トランプ次期大統領は、ウォン氏を指名し、「金正恩(キム・ジョンウン)総書記と私の首脳会談交渉を助けた」と紹介した。ウォン氏は、韓国とも縁の深い知韓派だ。ビーガン氏と共に光化門(クァンファムン)で「タッカンマリ」を食べたウォン氏は、その後、クーパンの役員としてソウルに出張する際には、時間を割いて韓国外交官の友人らに会い、韓国料理店を訪れた。

ウォン氏のような人物がホワイトハウスに入ったからといって、すぐに韓半島問題の議論が再開されるわけではない。ウクライナ-ロシア戦争、中東戦闘が優先事項になっている。中国専門家でもあるウォン氏は、米中対立の懸案も扱わなければならない。何よりも北朝鮮核問題は、一部の参謀の経験だけで解決できる問題ではない。もはや非核化交渉はないという正恩氏と核凍結あるいは軍縮を議論しても、結局、検証という罠に再び陥るしかない構造だ。

韓国としては、どのような方法であれ、米朝交渉が再開された場合、韓国が疎外されないよう韓米協力を維持することが急務だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権で露骨に疎外され、韓国を含む3者会談を作ろうとして恥をかいた前例がある。しかも今は、北朝鮮の「通米封南」の意図がさらに露骨化している。韓米間には在韓米軍駐留経費負担増額といった敏感な同盟懸案も控えている。ウォン氏のような人物を介して、第2次トランプ政権を「ナッジング(nudging)」する必要がある。

人脈と戦略がしっかりと裏付けされた洗練された外交で韓国がこれを円滑に進めることができれば、米国と共に北朝鮮を交渉のテーブルに引き出すことは不可能なことではないだろう。もしかすると、米国の交渉代表の袖口を必死に握りしめたあの北朝鮮外交官と再び対面することになるかもしれない。