トランプ次期米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との直接対話の可能性が取り沙汰されていることに関連して、韓国政府は、北朝鮮と米国が韓国を素通りして直接取引に踏み切る可能性は高くないと見ている。政府筋は27日、「以前、北朝鮮との取引で物別れとなった経験を記憶するトランプ氏が、安易に正恩氏と手を結ぶことはないだろう」と話した。
ただし、政府は「北朝鮮が核保有国であることを前提とした核軍縮と核凍結の意図を正恩氏が露わにしているため、トランプ氏が非核化などの条件もつけずに正恩氏と交渉に臨んだ場合、どんなことでも起こり得る」と警戒している。トランプ氏は大統領候補だった時、バイデン政権の対北朝鮮政策、基調を批判してきた。そのため、バイデン政権との差別化を図るために「トップダウン」方式で、まずは条件なく交渉の席につくよう正恩氏に提案する可能性は十分にある。正恩氏が呼応すれば、その後の核軍縮交渉など直接取引につながる可能性があると専門家らは見ている。正恩氏が21日、米国と「行けるところまで行った」としながらも「交渉」「共存意志」などの表現を使ったのも、トランプ氏が敵対的な対北朝鮮政策の撤回などの意思を示せば、交渉に臨むことができるという考えを明らかにしたと解釈される。
正恩氏が南北断絶を宣言したため、米朝間の直接取引が成立すれば、韓国が韓半島の安全保障構想から疎外される「通米封南」の可能性が高くなるのは必至だ。交渉で迅速な成果を重視するトランプ氏が、北朝鮮から迅速な対価を得るために、非核化ではなく核軍縮など比較的容易な条件を北朝鮮に提示すれば、韓国の安全保障リスクはさらに大きくなる。
一部では、米朝首脳間の直接取引が始まり、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が一部疎外される場合、バイデン政権時代に核協議グループを発足して拡大抑止の実行力を強化した韓米協力が弱体化する可能性があるとの懸念も出ている。韓米日がこれまで培ってきた安全保障協力の「制度化」が弱体化する可能性があるという観測も流れている。
申晋宇 niceshin@donga.com