Go to contents

ウクラ武器支援ジレンマを招いた政府

Posted November. 29, 2024 09:04,   

Updated November. 29, 2024 09:04

한국어

北朝鮮がロシアに大規模の軍隊を派遣した事実を国家情報院(国情院)が初めて公式確認したのは先月19日のことだった。この派兵でウクライナ戦争は「遠い国」の話ではなく、韓半島の安全保障を揺さぶる直接的な脅威として浮上した。それだけに大統領室は「国際社会と共同で利用可能なあらゆる手段を動員して対応していく」と警告した。

それから1週間も経たなかった24日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は「(ウクライナに)殺傷兵器を直接供与しないという原則を持っていたが、より柔軟に北朝鮮軍の活動の如何によって検討することができる」と明らかにした。大統領が殺傷兵器支援の可能性に言及したのは初めてだった。特に同日、尹大統領は「段階別の武器支援」の条件として「北朝鮮が特殊軍をウクライナ戦争に派遣するなら」という前提までつけた。北朝鮮が追加の派兵規模を増やしたり、実際に戦闘に投入されて殺傷行為などに出れば、事実上政府が武器支援をするという一種の「レッドライン」を公開したものと受け止められた。

しかし、こうした「警告爆弾」をあざ笑うかのように、北朝鮮はその後、派兵規模を拡大した。国情院は最近、北朝鮮軍がロシア軍の空挺旅団などに配属されて訓練を受けており、このうち一部はすでに戦闘に参加していると把握していると明らかにした。

このように派兵をめぐる状況の深刻性はさらに増してきたが、政府のウクライナ兵器支援の立場はむしろ一歩後退した様子だ。これに先立ち、韓国政府の兵器支援発言などに鼓舞されたウクライナは、今回国防長官を代表とする特使団まで韓国に派遣し、「兵器リスト」を渡したというが、政府は内部的に今すぐは困難という立場を堅持している。

政府の武器支援をめぐるジレンマが強まったのは結局「トランプの帰還」のためと見られる。今月初め、米大統領選挙で勝利したトランプ氏は、ウクライナ戦争の早期終息路線を掲げた。韓国としては、そのようなトランプ氏を意識するしかない。

「トランプ要因」で武器支援ジレンマが強まっただけに悩みの重さも大きくなったのは当然だ。ただしトランプ氏が当選する可能性が小さくなかった状況下で、あえて米大統領選挙前に「レッドライン」と見受けられるような表現まで使って武器支援の可能性を繰り返して示唆したところは残念だ。生半可な発言が韓国の足を引っ張るかも知れないからだ。外交筋も「言葉は強かったが、何の後続措置も出さないから『オオカミ少年』になった格好だ」と話した。

期待値が高まったウクライナに失望感を抱かせるのも、韓国としては負担だ。500億ドルと推定されるウクライナ再建事業で順位が下がるも知れない。政府筋は「最初から与えないより、与えるように見せては与えない方が裏切られた気持ちが大きい」と漏らした。

北朝鮮派兵後の韓国の初期対応は、明らかに生煮えだったし、そこもまた悔やまれる。しかし、本番はこれからだ。来年1月にスタートするトランプ政権2期目が目前に迫り、ウクライナの武器支援要請はさらに切実になるだろう。最近、外交次官が「韓国産兵器がロシア人の殺傷に使われれば、両国関係は完全に破綻する恐れがある」と警告したロシアは、その威嚇のレベルを上げていくだろう。もしかしたら、対米、対ロ、対ウクライナの関係までが複雑に絡み合った外交の高次方程式をどのように紐解いていくかが、政権後半に入った尹錫悦政府の最優先の外交安保課題かもしれない。