尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が宣布した「非常戒厳」を国会が解除した3、4日の夜、各所で戒厳軍と市民の間で感動的な場面が見られた。上部の指示で仕方なく国会に投入された戒厳軍が撤退の際に市民に謝り、頭を下げた。軍に服務している息子に「市民を攻撃しないように」と呼びかける母親もいた。特殊部隊を退役した俳優の一人は、現場で出会った後輩軍人たちに近づき、市民を傷つけないよう説得する場面もあった。
3日、ユーチューブなどに投稿された動画には、国会で戒厳解除要求決議案が可決された後、撤退する戒厳軍の姿が映っていた。ある市民は撤退する戒厳軍を追いかけながら、「皆さんが持っている銃は国民と民主主義を守るために使ってほしい」と言った。すると、それを聞いた一人の軍人が後ろを振り返り、頭を下げた。黒いヘルメットをかぶり、マスクを目の下まで上げた戒厳軍は、ユーチューブを撮影している市民に向かって「すみません」と何度も頭を下げた。そして、先に行った軍の列を追いかけた。この動画を見たネットユーザーたちは、「軍人の子を持つ親として涙が出る」、「仕方なく服従して、どれほど辛いだろうか」などのコメントをつけた。
国会に投入された戒厳軍と同じ部隊(第707特殊任務団)で服務した俳優イ・グァンフンさん(44)が、戒厳軍を説得する様子も動画で拡散された。あるユーチューブチャンネルに公開された動画には、国会に行ったイさんが、戒厳軍に近づき「私は707の先輩だ。除隊して20年経ったが、君たちの先輩だ。イ・グァンフン中士だ」と話す様子が映っていた。イさんは1999年に入隊し、2004年に除隊したという。イさんは、「命令を受けて来たことは知っているが、冷静にならなければならない。あまり体を使って阻止するな」と忠告した。
あるオンラインコミュニティには、軍服務中の息子に母親が送ったと思われるカカオトークメッセージのキャプチャ画面が投稿された。母親は息子に「市民に銃を向けてはならない。武器もない民間人に。この状況は私、お母さんになる可能性もある」と繰り返し呼びかけた。
SNSには、武装した戒厳軍が国会に投入された写真と動画がリアルタイムで拡散され、軍人を家族に持つ市民が不安に震えた。会社員のイムさん(32)は、「従弟が最前線で陸軍に服務しているが、連絡が取れず、家族が心配している」と話した。弟が服務中だというパクさん(28)は、「軍人は命令に従わなければならないので、今の状況は困惑しているだろう。何事もないことを願う」と話した。
チュ・ヒョンウ記者 イ・チェワン記者 woojoo@donga.com