目前に迫ったファーウェイリスク

最近、どこに行っても大統領弾劾の話で持ち切りだ。米国のドナルド・トランプ次期大統領の２度目の政権まで１ヵ月も残っていないのに、トランプの不確実性に鈍感になったのではないかと懸念される。特に「ファーウェイリスク」への備えは、最初から忘れたようだ。だが、トランプ２期目は、再び韓国に「ファーウェイの通信機器を使うな」と要求し、その強さは１期目の時よりさらに強くなるだろう。

ファーウェイに対するトランプ次期大統領の不信は根強い。中国人民解放軍将校出身の任正非は、１９８７年にファーウェイを設立し、小型通信機器を販売した。米国は、ファーウェイが通信機器を利用して、機密情報を中国政府に流出させると警戒した。米国は口頭で警告してきたが、トランプ政権１期目の時に刀を抜いた。２０１９年５月、ファーウェイと系列会社７０社を輸出制限リストに載せ、制裁に乗り出したのだ。

米国は、グローバル通信網、衛星、海底ケーブルなどを通じて世界情報を掌握してきた。中国の通信機器が設置され、情報が漏れることを米国は想像すらしたくないだろう。トランプ次期大統領は、中国通信事業の自力更生の象徴であるファーウェイを再び叩くしかない。

米国は、友好国にも同じ措置を取るよう求めた。米国がデジタル時代の覇権を構築する姿を扱った著書「アンダーグラウンドエンパイア」に出てきた一節を紹介する。「２０２０年２月、トランプは英国のボリス・ジョンソン首相との電話で、ジョンソン首相が英国通信企業のファーウェイ設備の購入中断の要求を断ると、『卒倒直前まで』激怒し彼を猛非難した。トランプ氏の怒りは、声を高める水準を超えた」。このような米国の圧迫に、日本、オーストラリア、英国、フランスなどがファーウェイ装置を排除した。一方、韓国政府は、民間企業が独自に決める事案だと主張してきた。

米国の制裁で、ファーウェイの売上は２０２０年に停滞し、２０２１年には激減した。しかし、２０２３年、ファーウェイの売上は回復傾向に転じた。市場調査会社のオムディアによると、２０２３年基準のグローバル通信機器メーカーのシェアは、ファーウェイが３１.３％で１位であり、続いてエリクソン（２４.３％）、ノキア（１９.５％）、ＺＴＥ（１３.９％）、三星（サムスン）電子（６.１％）の順だ。米国の制裁にも、ファーウェイは再び立ち上がっている。

韓国国内のモバイル通信業界で、ファーウェイ装置のシェアは１０％程度になる。しかし、ファーウェイは持続的に価格の大幅引き下げ、既存の通信機器の撤去費用の負担などを掲げ、韓国市場を攻略している。あるモバイル通信会社は、老朽化した装置の交換候補としてファーウェイの製品を挙げ、最近検収まで終えたという。

韓国政府は、取り締まりをすることも、放っておくことも曖昧な状態に置かれている。「安保をめぐる懸念がある」という推測だけで、民間企業の投資決定を防ぐことは難しい。対中外交の側面も考慮しなければならない。ファーウェイは、三星電子、ＳＫハイニックスで年間兆単位規模のＤラムやＮＡＮＤ型フラッシュを購入する顧客でもある。

だが、政府の無対応に対し、トランプ２期目の政府が、「在韓米軍を撤収させる」と威嚇するかもしれない。米議会は２０２０年末、海外に米軍兵力を配置する際、駐留国家でファーウェイなど中国企業の５Ｇモバイル通信技術を使用するかどうかを考慮しなければならないという条項を国防授権法案（ＮＤＡＡ）に盛り込んだ。

政府が乗り出すのが難しいなら、企業が自主的に「バイコリアファースト」を宣言するのはどうだろうか。古い通信インフラを変え、人工知能（ＡＩ）のネットワークを構築する際、国産通信機器を最優先することだ。これは、国内通信機器産業の育成にもつながりかねない。その大半が中小・中堅企業である国内通信機器業者にとって、立派なサンタのプレゼントになるだろう。