米ルイジアナ州ニューオーリンズのテロ車両から過激派組織「イスラム国」(IS)の旗と爆発物が発見され、「車両テロ」への警戒感が高まっている。日常生活で頻繁に使われる車が致命的なテロの武器として使用され、恐怖感が広がっている。
実際、最近の車両テロは増え続けている。米サンノゼ州立大学のミネタ交通研究所(MTI)によると、1963~2019年に意図的に車を突進させて人身被害を引き起こした事件(計184件)の7割が14年以降に発生した。16年に車両テロを奨励する指針を出したISは、14~17年に世界で17件の車両テロを起こし、173人を殺害した。反イスラム主義テロにも車両が動員された。昨年12月、ドイツのマクデブルクで開かれたクリスマスマーケットでは、サウジアラビア出身の男性がSUVで群衆に突っ込み、5人が死亡、200人以上が負傷した。
犯行動機が過激主義イスラムとは無関係の車両テロも少なくない。昨年11月、中国・珠海では離婚後の財産分与に不満を抱いた62歳の男性が車で人々を襲い、35人が死亡した。17年、米バージニア州シャーロッツビルでは、白人至上主義者が車を運転して人種差別反対デモ隊に突進し、36人が死傷した。
車両テロが増加しているのは、車が銃や爆発物などに比べて入手しやすく、セキュリティーチェックも比較的自由であることによる。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米連邦捜査局(FBI)は内部文書で、「爆発物や武器へのアクセスが制限された攻撃者が車を利用すれば、最小限の経験や訓練でも大きな被害を与えることができる」と分析した。英紙タイムズも、車が「貧しい人の大量破壊兵器(WMD)」になったと伝えた。
コロナ禍後、大規模な屋外活動が増え、車両テロに容易な環境が造成されたという分析もある。ほとんどの車両テロが政府機関などの高官ではなく、一般人をターゲットにしているからだ。
これにより、多くの都市が車両テロを阻止するために車両進入遮断装置やバリケードなどを設置していると、AP通信は伝えた。しかし、交通の不便などを招き、テロを完全に阻止するには限界があることは明らかだ。ニューオーリンズ市のラトーヤ・カントレル市長は記者会見で、「大晦日に300人余りの警察官が配置されたが、加害者は意図的にバリケードを迂回して犯行に及んだ」と明らかにした。ドイツのクリスマスマーケットの事故でも、加害車両は救急車専用車線を突き破り、市民を襲った。
洪禎秀 hong@donga.com