バッテリーのコア素材であるニッケルの価格が、恐ろしい勢いで高騰している。韓国の次世代主力産業として浮上した電気自動車用バッテリー産業が、急激なコスト上昇により歯止めがかかりかねないという懸念が出ている。特に、ロシアがニッケル輸出を中止すれば、グローバル供給不足の現象が長期化しかねず、緊張感はさらに高まっている。
9日、韓国光海鉱業公団・韓国資源情報サービスによると、英ロンドン金属取引所(LME)基準のニッケルの1トン当たりの価格は、7日(現地時間)基準で4万2995ドル(約5312万ウォン)だった。1年前の昨年3月8日の1万6115ドルに比べれば、価格上昇率は166.8%に達する。
ニッケル価格は、2019年1月の1万440ドルから先月28日は2万5240ドルまで上昇し続けた。電気自動車の販売台数が急激に伸び、バッテリーの需要が上昇したことが主な原因だった。ニッケルの含有量が高いほどバッテリーの容量が大きくなり、電気自動車の走行距離も伸びる。
ウクライナを侵攻したロシアに対し、グローバル経済制裁が本格化すると、ニッケル価格はさらに大幅に上昇し始めた。ロシアは、全世界のニッケル供給量の約10%を占めている。供給不足が深刻化するという見通しにより、ニッケル価格は今月に入って、わずか1週間で、前の3年2カ月分の上昇幅よりさらに大幅に上昇した。ついに8日、ニッケルの1トン当たりの価格が取引中に一時10万ドルを超えると、LMEはニッケル取引を急きょ中止した。LME側は、「最近の地政学的状況を考慮すれば、取引中止は数日間続く可能性がある」と明らかにした。
ニッケル価格の高騰で、「第二の半導体産業」と期待されてきたバッテリー業界は直撃を受けた。LGエネルギーソリューションやSKオン、三星SDIの韓国国内のバッテリー3社はもとより、バッテリー素材を供給するメーカーに至るまで、全ての産業生態系への衝撃が続いている。市場調査会社のSNEリサーチは、バッテリー3社のニッケル需要を今年は9万1000トン、来年は13万4000トンと予想している。2030年には、今年の7倍を超える64万8000トンが必要になると予想される。
韓国内のバッテリー3社は、ニッケルの大半を南米や中国、豪州などから持ち込んでいる。ロシアが輸出を中止しても、直ちに需給が中止されることはない。しかし、追加の価格上昇によるコスト負担は、避けられない状況となっている。特に韓国内企業は、バッテリーに入る陽極材のニッケル含量を90%以上に引き上げた「ハイニッケル」製品に集中している。ハイニッケルバッテリーの普及が増えており、電気自動車1台当たりのニッケル需要は、今年の36キロから2030年は41キロにまで上がると予想される。さらに、ステンレス鋼などの鉄鋼分野に入るニッケル需要まで加わり、2024年からは世界的なニッケルの供給不足が固定化するだろうという懸念も出ている。業界では、世界バッテリー業界トップの中国CATLが、近いうちに、バッテリー生産を減らすこともありうるという見方が出ている。
ニッケル価格が高騰したことを受け、政府もアフリカ・マダガスカルのアンバトビー・ニッケル鉱山の売却を保留し、再検討に乗り出した。産業通商資源部の関係者は、「該当鉱山を売却するか保有するかはまだ決まっておらず、関連手続きが進められている」と説明した。売却計画を白紙に戻すこともありうるという見方も出ている。アンバトビー鉱山は、年間、最大で4万8000トンを生産できる世界3大のニッケル鉱山だ。これに先立って政府は、海外資源の開発に乗り出してきた公共機関の経営悪化が激しくなると、26の海外資産を売却することにした。このうち11個が売却され、15個が残っている。
韓国自動車産業協会の鄭晩基(チョン・マンギ)会長は、「電気車の場合、ニッケルやリチウム、コバルトなどのコア素材の輸入依存度が高い」とし、「海外資源の開発拡大などを通して、安定的な原材料の確保策を用意しなければならない」と強調した。
ソ・ヒョンソク記者 世宗市=パク・ヒチャン記者 skytree08@donga.comramblas@donga.com