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ソウル市の少子化政策が嬉しい理由

Posted November. 29, 2023 08:58,   

Updated November. 29, 2023 08:58

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2011年1月、呉世勲(オ・セフン)ソウル市長は全面無償給食に反対し、「住民投票で決めよう」と政治的勝負に出た。当時野党だった民主党の福祉政策について、呉市長は「無償医療や無償保育を前面に押し出し、非良心的な票買い行為を行っている。亡国的な無償津波を防げなければ、国が揺れる」と厳しく批判した。

筆者は当時、ソウル市の担当記者だった。無償給食の問題が全国的な話題になり、ソウル市の関係者から、なぜ選択的福祉が必要なのかについての説明を耳にたこができるほど聞いた。当時、住民投票率が開票基準の33.3%に及ばず、25.7%にとどまり、投票箱も開けられないまま呉市長は辞任しなければならなかった。2021年の再・補欠選挙で当選し、10年ぶりに再びソウル市長に復帰するまで、市長職は民主党が占めた。

その後、私的な席で呉市長に会うたびに、彼は市長職をかけたことを後悔しながらも、選択的福祉に対する堅固な信念を表明した。ところが、最近会った40代の会社員の女性から聞いた話は意外だった。この女性は、「ソウル市が不妊夫婦の施術費を所得基準の区分なしに支援してくれて、どれほどありがたいか分からない」とし、「保健福祉部の不妊施術費支援は、所得が一定水準以上であれば支援を受けることができず、共働き夫婦は事実上夢にも思わなかった」と話した。

呉市長が、少子化対策だけは普遍的福祉を受け入れたのだ。ソウル市は、今年3月から不妊手術費支援の所得基準を廃止し、すべての出産家庭に対し産後ケア費100万ウォンを支援することにした。国家存廃の問題がかかった少子化危機のためだ。

不妊手術を受けるためには、月に3、4回病院を訪れなければならないが、施術費は多くは400万、500万ウォンがかかる。3年以上不妊手術を受けているという30代の会社員は、「どんなことがあっても出生率を高めるという政府が、不妊手術費は所得基準に従っているのを見て、現場を知らない公務員が机の上から出した情けない政策だと思った」と話した。

来年1月からは、全国どこでも所得基準と関係なく不妊手術費の支援を受けられるようになった。大半の自治体が、月所得が一定額以下の家庭や基礎生活受給者、次上位階層だけに支援していたが、普遍的福祉に転換されるのだ。

残りの課題は持続可能性だ。もともと保健福祉部が担当していた不妊夫婦への施術費支援事業は、昨年から地方自治体に渡された。自治体ごとに予算事情が異なるため、ソウルのように相対的に豊かなところは問題ないが、財政が苦しいところは予算編成に困っている。政府が自治体事業だからといって手をこまねいて傍観するなら、財政難に陥っている地域では不妊夫婦への支援事業がうやむやになる可能性が高い。

国民権益委員会は今年8月、不妊手術費支援事業を国家事業に再び転換しなければならないと勧告した。11年前に市長職をかけていた呉市長も、少子化問題だけは一歩退いた。政府も少子化問題を解決するという意志があれば、不妊夫婦支援事業を政府事業に再び転換する案を積極的に検討しなければならない。