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体制批判のビラに接した北朝鮮住民の反応は

体制批判のビラに接した北朝鮮住民の反応は

Posted June. 27, 2020 08:17,   

Updated June. 27, 2020 08:17

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「ビラ」が再び南北関係を揺るがしている。

北朝鮮は16日、開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破した。対外的な大義名分は、伝えられているところによると北朝鮮への体制批判ビラの散布だ。近く韓国に対してビラ1200万枚を散布するとまで予告し、これに対抗して脱北者団体「自由北朝鮮運動連合」は、「22日に北朝鮮にビラ50万枚を散布した」と主張した。銃声のない「ビラ戦争」が休戦ラインを挟んで21世紀にも続いている。

「ビラ」は、張り紙を意味する英語の「ビル(Bill)」が日本語「ピラ」に変わったという説が一般的だ。韓国戦争から70年間、ビラも時代の流れと共に変化した。最近では、ドローンやGPS(全地球測位システム)などの技術を導入して散布するという主張もある。近頃は「紙爆弾」と呼ばれたりもする。敵軍の心を揺さぶり、戦争能力を落とし、心理的ダメージを与えるという意味が込められた。

●ビラの社会学―南北の政治・経済状況が反映

 

ビラをめぐって専門家らは、韓国戦争の時から南北のビラ散布が本格的に始まったと見ている。戦争当時、国連軍が撒いた北朝鮮へのビラは約25億枚、北朝鮮軍が撒いた韓国へのビラは約3億枚と推定される。この時が両者がビラを最も多く撒いた時でもある。

当時のビラは、大きな紙に新聞形式で製作された「ニュースビラ」が主流だった。相手が勝利を期待した戦線から出た暗鬱な情報や自分たちに有利な情報を盛り込むことが通常だった。当然、敵の士気を低下させようという目的が大きかった。「安全保証証明書」というものを撒くこともあった。「降参すれば助ける」とし、亡命者の安全を証明する文書だった。

1960、70年代は、互いの体制を宣伝する内容が大半だった。北朝鮮へのビラには、「経済開発5ヵ年計画」や「京釜(キョンブ)高速道路開通」など産業化の成功を伝える内容が多く含まれた。家族がビーチで避暑を楽しむ写真を入れたりもした。

 

北朝鮮も自分たちが豊かな国だと強調した。60年代初期、経済力が悪くなかった北朝鮮は、体制競争でも優位を占めたと自信を持った。実際、北朝鮮住民が暮らしぶりを具体的に載せたビラを韓国に送った。

しかし、80年代に入って南北の経済格差が比べられないほど広がると、北朝鮮のビラは政治的イシューに旋回した。特に、韓国指導者に対する露骨な非難を前面に出した。宣伝より扇動に近づいた。「全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事独裁治下で表現の自由を抑圧された国民が立ち上がらなければならない」など、全斗煥、盧泰愚(ノ・テウ)政府を誹謗する内容だった。海外メディアが5・18民主化運動の実状を報道した写真もしばしば加えられた。

旌善(チョンソン)アリラン研究所の秦庸ソン(チン・ヨンソン)所長は、「当時、韓国も体制優位を主張する内容のビラを年平均1億枚ほど散布した。また、東欧の北朝鮮留学生の脱北が続いたが、韓国の脱北留学生の写真をビラに積極的に活用した」とし、「南北の政治的・経済的世相がビラにも大きな影響を与えた」と説明した。

●ビラの政治学―南北関係が揺らぐたびにカードに浮上

韓国は2000年の南北首脳会談で相互誹謗の中止に合意し、04年から国家次元のビラ散布を実質的に中止した。しかし、脱北者団体や宗教団体など民間のビラ散布は依然として続いた。主に北朝鮮の世襲体制を非難することに焦点が合わされた。金正日(キム・ジョンイル)総書記の出生や女性関係、贅沢な生活などを批判する内容も多かった。

南北関係が悪化するたびに、ビラは再び全面に登場した。10年の哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没や延坪島(ヨンピョンド)砲撃など北朝鮮の韓国への挑発が相次ぐと、国防部は一時的に北朝鮮にビラ40万部を散布した。14年には、北朝鮮へのビラをめぐって南北間で銃撃戦が起こる一触即発の状況も発生した。北朝鮮が、ビラを載せた風船に向かって高射銃を発砲したのだ。韓国も北朝鮮軍監視所付近を機関銃で射撃するなど銃撃戦が続いた。ある政府関係者は、「16年に北朝鮮が4度目の核実験をすると、国防部はビラ散布を再開することを検討した」と伝えた。

 

文在寅(ムン・ジェイン)政府発足後、「ビラ戦争」は静かになったかにみえた。南北が18年4月、「板門店(パンムンジョム)宣言」で、「5月1日から軍事境界線付近で拡声器の放送やビラ散布などすべての敵対行為を中止する」と合意したためだ。しかし、今月に入って金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が脱北者団体のビラ散布を非難し、再びビラ戦争が水面上に浮上した。

最近は、情報技術(IT)が発達し、ビラの伝達形態と散布方式も進化した。脱北者団体は、ビニールの材質で作ったビラを大型風船で送り飛ばす方式を主に使う。風船の中にはビラの他にもUSBやSDカードなども入れて送る。これには、韓国ドラマや映画、韓国の経済発展の様子、韓国歌手の公演なども含まれているという。

 

対北朝鮮風船団のイ・ミンボク代表は、「USBに韓国戦争が北朝鮮の韓国への侵略で始まったというドキュメンタリーを必ず入れる。北朝鮮住民の価値観を揺さぶる事実の伝達に集中している」と述べた。

●ビラの科学―本当に150キロも飛んで行けるのか

ところで、ビラは本当に約150キロを飛んで平壌(ピョンヤン)市民にたどり着くことができるのか。自由北朝鮮運動連合の朴相学(パク・サンハク)代表は実際に、「今年4月、ドローンを使ってビラ1万部を平壌に送った」と主張した。

 

しかし、多くの専門家は、「可能だが、現実的に難しい」との反応を示した。ソウル大学機械航空工学部のイ・ドンジュン教授は、「ビラ1万枚の重さを支えるには、プロペラが4つのよくあるドローンでは事実上不可能」と指摘した。そのうえ、平壌までドローンを操縦することは、ドローンの専門家でなければ現実的にかなり難しいという。

 

方法がないことはない。機体の長さ3メートルを超える飛行機タイプのドローンを使い、自律飛行の操縦が可能な専門業者の助けを受けるなら、やってみる価値はある。イ氏は、「1台当たりの費用が少なくとも5千万ウォンほどかかるだろう」と話した。

GPSを利用してビラをぶら下げたアドバルーンの位置を追跡することは可能だろうか。GPS装置会社「KNCTEK」のパク・サンホ部長は、「もしスマートフォン通信機を風船に入れたなら不可能だ。基地局の範囲を越えれば受信が難しいためだ」と話した。これも方法がないことはない。非常に高価な「衛星通信モジュール」を使ったなら、平壌のように遠い距離でもGPS追跡が可能だ。この製品は1個当たり少なくとも300ドル(約36万ウォン)かかるという。

技術の裏づけがあっても、最も重要なのは気象条件だ。GPS技術を活用しても、風と気圧のパターンが正確に合致しなければ平壌まで行くことはできない。このため、アドバルーンを飛ばしても、実際に北朝鮮に行くのは一部になるほかない。匿名のある気象専門家は、「大気の上層部は風が主に西から東に吹くため、ビラは日本の方向に行く確率が高い。気象環境が随時変化し、正確に予測して北朝鮮にビラを送るには、非常に高次元的な時期の予測が欠かせない」と伝えた。


キム・テソン記者 ク・トゥッキョ記者 kts5710@donga.com · kootg@donga.com