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坂本龍一氏ががん闘病中に作った曲「ありのままの私の声」

坂本龍一氏ががん闘病中に作った曲「ありのままの私の声」

Posted January. 25, 2023 08:46,   

Updated January. 25, 2023 08:46

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吸気と呼気の間にピアノの旋律が響く。日本の音楽家坂本龍一(71)が17日にリリースした6年ぶりのオリジナルアルバム「12」は、彼ががんと闘いながら日記をつけるように作った音楽スケッチだ。ピアノと電子音、現場音が調和し、瞑想的な時空間を創造する。坂本は、「何も手を付けずにわざとありのままを伝える私の今の声だ」と、今回のアルバムを紹介した。彼は2014年に咽頭癌の診断を受け、2021年1月に再び直腸癌の闘病事実を告白した。今回のアルバムには、2021年以降に作った曲が盛り込まれている。曲を作った日付を、各曲のタイトルにした。

アルバムには、全般的に安らぎが溢れている。ピアノの旋律の間に、坂本の息吹と襟に何かが擦れるような音、ジュージューという音が自然に混ざっている。パク・チャンハク作詞家は、「音そのものと内面の意識世界にさらに深く沈んでいるようだ」とし、「大衆音楽としてはありふれたものではないが、彼の音楽を着実に追ってきたファンには慣れている。まさにこの点が、彼の音楽が持つ独歩的存在感だ」と話した。

曲には、マニアックな雰囲気とディテールが満載だ。イ・デファ音楽評論家は、「暖かいがどこか暗くて悲しい、厳しい冬の中の山小屋のような雰囲気が魅力的で哀れでもある」とし、「空っぽのようだが暖かくぎっしり詰まった音、水平線を見るような空間感など、世界的巨匠らしくサウンドのディテールを素敵に生かした」と話した。

前作に比べて、メロディーの不在が目立つ。ピアノの旋律は予測が難しく不規則だ。ファン・ソンオプ音楽評論家は、「前作の『Async』(2017年)にはメロディーの流れが慣れていて、明確な曲があったが、今回のアルバムは『音楽を聴く』という感じがあまりしない」とし、「雨粒が落ちる音のように日常に近いので、『演奏はどうだったのか』『出来具合はどうだったのか』のようによく使われる基準は意味もなく適用しにくい」と話した。ファン評論家は、「坂本が歩んできた道がどんな意味があったのかを確認するための目的に合致する作品だ」と話した。

「12」は、坂本の最後のレギュラーアルバムになる可能性が高い。ファン評論家は、「今回の新譜は、意図しない音の原初的な力に注目してきた彼の理想郷を最も自由に具現した作品ではないかと思う」とし、「すべての音が音楽になり、(無理に)手を付けない音が聞く人に最も大きな自由を与えるということを証明しようとする作品だと、雄弁しているように感じられる」と話した。


キム・テオン記者 beborn@donga.com