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韓江、村上春樹...味覚を動員して読み直す

韓江、村上春樹...味覚を動員して読み直す

Posted January. 06, 2024 08:27,   

Updated January. 06, 2024 08:27

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「キュウリ」

長編小説『ノルウェーの森』(民音社)で、主人公の緑が何を食べたいかと尋ねると、がん闘病中の父親はこう答える。緑は「いいですよ」と、食べやすい大きさにキュウリを切る。海苔を巻いて醤油につけ、楊枝に刺して口に運ぶ。父は何度も噛み、そして呑みこみ、「うまい」と言う。緑は父親を見つめながら静かに言う。「食べものがうまいっていいものです。生きている証しのようなもんです」。

料理評論家として活動する著者は新刊で、このシーンを日本の作家、村上春樹(75)の小説の中で最も印象的な場面として挙げる。先の見えない病人と、水分をたっぷり含んだシャキシャキのキュウリが醸し出す生気のコントラストが劇的に感じられるというのだ。著者は、「あまりにも日常的すぎて取るに足らない食材に最小限の手を加えて料理に昇華させることは、日常でも小説でも簡単なことではない」と話す。

同書は、文学作品の中に盛り込まれた食べ物の話をまとめたエッセイだ。特に小説の中に登場する食べ物は、それぞれの時代像を含んでいるというのが著者の考えだ。米国の作家ルイーザ・メイ・オルコット(1832~88)の長編小説『若草物語』で、主人公たちはライムのピクルスを食べる。当時、海水に漬けた状態のライムは果物に分類されず、関税が低かったためだ。米国作家アリス・ウォーカー(80)の長編小説「カラー・パープル」(文学トンネ)で、米南部に住む黒人はビスケットをよく食べる。ふくらし粉が高いため、白人が食べるスコーンを作ることができなかったからだ。

韓江(ハン・ガン、54)の連作小説集『菜食主義者』(創批)で、主人公は肉を食べろと強要する夫とけんかする。15年前の小説だが、代替肉が増え、ベジタリアンの飲食店が増えた最近では想像できないことだ。チョ・ナムジュ(51)の長編小説『82年生まれ、キム・ジヨン』(民音社)には、家族のために食事を作らなければならなかった母親の苦しい人生、イ・チャンレ(59)の長編小説『永遠の異邦人』(RHコリア)には、米国式中華料理を食べて生きてきた在米韓国人の人生が描かれている。今日はユーチューブの「食事動画」の代わりにこの小説を読んでみてはどうだろうか。


イ・ホジェ記者 hoho@donga.com