14日、バンコク全域が赤い波で覆われた。タイのタクシン元首相の支持者約10万人が、反政府勢力「反独裁民主戦線(UDD)」主導の下、赤いシャツを着て、反タクシン派のアピシット首相の退陣と早期総選挙を求める反政府デモを行った。08年に、プミポン国王を支持する王党派で構成された黄色いシャツのデモ隊がバンコク空港を占拠し、タクシン支持派のサマック首相の辞任を求めてから2年後、政治的反対派が同じ様相のデモを行ったのだ。
◆タクシン元首相の財産23億ドルのうち、「権力乱用を通じて蓄積された」14億ドルを没収するという最高裁の判決がデモを触発した。タイ最大の財閥であるチナワットグループのオーナーであるタクシン元首相は、06年の米国訪問中に軍部クーデターで失脚し、その後、英国や中国などで亡命生活をしているが、暮らしぶりは豪華だ。タクシン元首相は、タイ経済を立て直したCEO型政治家であり、腐敗と独裁の象徴という相反する評価を受けている。通貨危機の時に借りた国際通貨基金(IMF)の資金を2年操り上げて返済するなど経済を回復させたが、自分が設立した移動通信会社を売った際には巨額を脱税した。
◆タクシン元首相が追放されて4年経ったが、彼が種をまいたポピュリズム政策は、芽が出て根を下し、今もタイ国民に幻想を植えつけている。タクシン元首相は、在任時に国民皆医療保険を実施し、韓国ウォンで1000ウォンほどで誰でも病院に行けるようにし、農家の負債の元利金返済を猶予させ、240万世帯に恩恵を与えた。その一方、故郷のチェンマイをはじめ、立ち遅れた北部地域を優遇した反面、南部地域は冷遇して地域感情を引き起こし、メディア統制をするなど、民主主義を後退させた。
◆恩恵を享受していた人々は、その甘い誘惑から抜け出すことは難しい。大型車に乗っていた人は小型の車に乗りかえることが難しく、アメを取り上げられた子どもは泣くものだ。農民と貧困層がタクシン元首相を支持する理由は、その時代の豊かな分配が懐かしいためだ。韓国の政界でも、6・2地方選挙を迎え、学校の無償給食、幼稚園の無償化など、ポピュリズム公約が溢れている。ただほどいいものはないというが、ただの昼食はない。恩恵を享受する人々はいいが、後日、誰かが必ず食事代を払うことになる。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com