チョコパイは世界中の約60ヵ国に売られている。ベトナムの祭祀の供え物に出され、中国では結婚式の答礼品として愛用されている。ロシアの子どもたちは、チョコパイがおいしさに惹かれて、韓国の会社に就職したがっているほどだ。戦争で廃墟になったアフガニスタンの子どもたちに幸せな笑みをもたらすお菓子であり、昨年、地震で生活必需品の供給が円滑でなかったチリの人々の飢えを凌いであげた希望のお菓子だ。白頭山(ペクドゥサン)中国地域の山荘のおやつコーナーで最もよく目につくところに並べられているのもチョコパイだ。
◆1974年に初めて発売されたチョコパイは、老若男女を問わず好んで食べられる代表的なお菓子として長い時間君臨してきた。140億個が売られたA社のチョコパイの袋に書かれた「情」は、最も成功的な広告コピーに挙げられる。しかし、歳月には勝てないもので、40年間国民のお菓子だったチョコパイも甘い味よりは健康食を好む社会風潮の中で、人気が下火になっている。軍隊で最もおいしいおやつの座も「ポグリ(袋にお湯をかけて食べるラーメン)」に明け渡したという。
◆資本主義風潮の拡散にアレルギー反応を見せている金正日(キム・ジョンイル)政権が最近、動労者へのインセンティブをチョコパイの代わりに現金で支給することを要求している。市場を通じて「南朝鮮の味」が広がるのを防ぎ、人民が延長勤務、休日勤務で苦労しながら稼いだお金まで奪おうとする稚拙な発想だ。開城工業団地の労働者たちは、天安(チョンアン)艦沈没事件や延坪(ヨンピョンド)島砲撃時のように緊張が高まれば仕事を失うのではないかと気を揉みながら、さらに懸命に働くという。北朝鮮政権は、中東や北アフリカでのジャスミン革命のような「チョコパイ革命」が起きることを恐れているようだ。
ハ・テウォン論説委員 triplets@donga.com